窓の外にきらめくのは、レインボーブリッジと東京タワーの光のハーモニー。都内屈指の夜景を楽しみながら、ぜいたくな空間でこだわりのワインを堪能できる、とっておきの場所がある。ホントは秘密にしておきたいが、読者の皆さまにはこっそり教えちゃおう。ニッコー・ホテルズ・インターナショナルの旗艦ホテル「グランドニッコー東京 台場」30階レストランフロア「Another Dimension’ Another Tokyo」だ。「鉄板焼浜木綿」「The Grill on 30th」「The Bar & Lounge」のいずれからも、宝石を散りばめたような美しい夜景を愛でることができる。
極上の時間を彩るのは、景色だけではない。実は、ここでしか飲めない特別なワインを提供している。しかもそれは、ソムリエをはじめホテルのスタッフの手で、東京で造られたプライベートワインなのだ。
昨年「鉄板焼浜木綿」で、おいしいシャルドネをいただいた。塚田忠保代表取締役社長総支配人から、そのワインがオリジナルで、ぶどうの収穫からコルクの打ち込みやラベル貼りまでスタッフが手掛けたと聞きビックリ! 詳しいことが知りたいと、先日改めてシェフソムリエの似内利徳(にたないとしのり)氏にお話を伺った。
2017年、前述のレストランフロアのリニューアルに当たって、何か東京から情報発信できないかと探ることに。そこで候補に挙がったのが、東京産のワイン。東京には当時三つ、現在四つのワイナリーがあるが、知らない人が多い。えー?ぶどうどうするの?という質問が飛んで来そうだが、買い付けたぶどうでワインを造る「ネゴシアン」と称するワイナリーも多い。あのドンペリだってネゴシアンだ。今は物流の発達で、地球の裏側からでも新鮮な食材が届く時代。国内のぶどうを東京に運ぶのは、何の問題もないのだ。
そこで白羽の矢を立てたのが、江東区にある「深川ワイナリー」。生産量年間2万本と小規模だが、丁寧な造りで知る人ぞ知るワイナリーだ。オープンは2016年。奇しくもホテル名が変わり、リブランドしたのと同じ年。これから一緒に新しい世界を広げて行こうと互いに共感できたと、似内氏は振り返る。
自分たちの手で東京のワインを造るというプロジェクトを立ち上げた。だが、現実になっていくにつれ、不安は募るばかり。初めてのことだらけだし、当然まとまった資金も必要だ。会社が理解を示してくれたのはモチロンのこと、決定権のある上司が力になってくれたため話はトントン拍子に進んだが、金額の大きさを知っているだけに、おいしいワインを造れなかったらどうしよう?売れなかったらどうしよう?というプレッシャーはあったと、似内氏は語る。
最初から何種類も造るのは無理だからと、初年度に選んだぶどうはシャルドネ。造り方によってさまざまな可能性を持つこの品種で、3タイプのワインをリリースすることに決めた。さぁ、どうなることやら? 続きは次号をお楽しみに!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。