
マカオに出掛けてきた。昨秋香港とつながる「港珠澳(こうじゅおう)大橋」が開通。全長55キロメートルの橋を、シャトルバスに揺られることたったの30分で到着! マカオ好きとしては、超便利でうれしい限りだ。
マカオは気軽に行ける近くのラスベガス、とでも言おうか。ヴェネチアンやウインなど、ホテルもラスベガスがそのまま移動したかのよう。違うとすれば、お料理。ご承知の通り中国に返還されるまでポルトガル領だったため、大航海時代に本国からマカオへ至る航路の途中にあったアフリカやインド、東南アジア各地のスパイスを取り入れ、元々食されていた広東料理と融合し、独自のスタイルを構築している。
筆者の定宿「ホテルオークラマカオ」のある複合リゾート施設「ギャラクシー・マカオ」内に、「GOSTO」というマカオ料理とポルトガル料理の店がある。この両者は区別されないことも多いが、同店のメニューには「MACANESE」と「PORTUGUESE」に分けて記載されている。
まずは、ポルトガル料理のカニと卵のサラダ。マヨネーズソースであえたゆで卵とカニ肉の上にレタスが。続いて、ジャガイモとキャベツのスープ、チョリソーオイル添え。「カルド・ヴェルデ」と呼ばれる、ポルトガルの国民食ともいえる伝統的なスープらしい。
そして「パスティス・デ・バカリャウ」。バカリャウとはポルトガル語でタラのこと。大航海時代から保存食として親しまれてきた干しタラとジャガイモのコロッケである。南仏の郷土料理ブランダードに衣を付けて揚げた感じだ。
スタッフおススメのポーク・ナックルもオーダー。ドイツ料理の定番ポーク・ナックルは皮ごと焼いた骨付き肉だが、ポルトガル料理のそれは肉を崩れるほど煮込んだものだった。コリアンダーが入っていて、意外なハーモニー。カリカリにトーストされたパンに付けて食すと美味。
続くハマグリのレモン・ワイン煮にもコリアンダーがタップリ。ポルトガル人ってかなり香菜好きなんだ! ハマグリと言うよりアサリだったが、ソースは口福の味わい。同じくソースがウリの、スタッフがガーリック・シュリンプと呼んでいた料理には、ニンニクの効いたポルトガル・ビールとバターのソースが別添えで登場。パンを浸して食せば、超ベリウマ!
最後に、マカオ・スタイルの「アフリカン・チキン」。鶏肉にさまざまなスパイスとココナッツミルクを入れた辛いソースをかけた料理なのだが、調理法もスパイスも店によって千差万別と言われる。なぜアフリカンなのか? 大航海時代のポルトガルの探検家、ヴァスコ・ダ・ガマが、喜望峰を経てアフリカのモザンビークにたどり着いた際に食した鶏のグリルが原型だという説が。何ともロマンがあるではないか。同店のそれは、意外にも比較的マイルドな味。交通の便が良くなったことだし、次は違うお店のアフリカン・チキンを食べに行ってみたいと思う筆者である。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。