【竹内美樹の口福のおすそわけ 258】お餅の「ナゼ?」 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹

  • 2019年1月31日

 前回お雑煮について書いたが、具材の主役はお餅。実は筆者、大学院時代、学会誌に論文を載せていただいたことがある。タイトルは、「餅の意義をめぐって」。国文学専攻だったが、当時は民俗学に興味を抱いていたから、といえば聞こえは良いが、単に食いしん坊だったのだ。…というワケで、今回もう少しお餅について書かせていただきたい。

 お餅といえば、やっぱりお正月。ナゼなのか?と探ってみると、長く伸びることから長寿の象徴として祝い膳にふさわしいとか、野菜と共にお雑煮に入れると「名(菜)を持ち(餅)上げる」として縁起が良いなどのいわれがあるようだ。

 前号でもこのお雑煮は、お正月に家々に幸をもたらす歳神様にお供えした餅と、その土地の食材で作ったのが始まりと述べたが、これは神に供えた物を食すことによって神様のパワーをいただく「神人共食」という考えに基づいている。

 お正月に使う祝い箸の両端が細くなっているのも、一方は人が使い、もう一方は神様に使っていただくためで、やはり「神人共食」を表したものなのだ。

 では、ナゼ餅をお供えするのか? 神様のお供え物を「神饌(しんせん)」と呼ぶが、農耕民族の日本人にとって大切な、米や米に由来する酒、餅などを神饌とする場合が多く、中でも餅は、餅自体に神が宿る特別な存在であった。その典型例が鏡餅だ。心臓をかたどったとも、三種の神器の一つ八咫鏡(やたのかがみ)餅は、歳神様が宿る依代とも考えられていたのだ。

 この鏡餅のお下がりを分け与えるのが「歳魂(としだま)」で、餅に宿った歳神様から新たな年を生きる命を賜るという考えがあった。今のお年玉の始まりとされる。

 こうして餅には霊力があるという考えから、昔は食べると力が出る「力餅」が峠の茶屋で売られていたが、単にスタミナ源というだけでなく、旅の無事を祈り神の力を分けてもらう意味もあったようだ。出産に際し産婦の実家から餅を贈る地域があるが、産婦に力をつけ、さらに出産の無事を祈るものである。また、子供の1歳の誕生日に背負わせる「力餅」も、健康を祈るための風習だ。

 ところで、餅の形は地域によって違うが、東日本はナゼ角餅なのか? せっかちな江戸っ子は、一つ一つ手で丸めるより、板状に延して切り一度にたくさん作れる角餅を好んだという説や、切る前ののし餅が「敵をのす」という縁起担ぎになったという説などさまざま。

 角は焼き、丸は煮るのに向いているが、筆者は角餅を焼いてバターとグラニュー糖をつけるのが大好き! 年末に切り分け冷凍してある角餅は、福島の知人が育てた極上糯米(もちごめ)「こがねもち」を香川の知人が臼ときねでひいて下さったもの。

 餅自体のポテンシャルが高いのは言うまでもないが、熱々のお餅で溶けたバターにグラニュー糖のサクっとした食感、塩味と甘味のバランスも最高!

 この食べ方、だまされたと思って一度お試しいただきたい。口福の笑み間違いナシ。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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