【竹内美樹の口福のおすそわけ 256】日本文化の発信基地 竹内美樹


 毎年初詣客でにぎわう「神田明神」。正式名称は「神田神社」と言い、創建約1300年の歴史を持つ。江戸城表鬼門を守護する場所にあり、江戸総鎮守として信仰を集めて来た。御祭神は、大己貴命(おおなむちのみこと)(大黒様)、少彦名命(すくなひこなのみこと)(恵比寿様)、平将門命(たいらのまさかどのみこと)で、それぞれに縁結び、商売繁盛、勝負運にご利益があるとされている。大手町、丸の内、日本橋などが氏子地域に含まれるため、企業参拝も多く、日本三大祭の一つ「神田祭」でも有名だ。

 最近ではアニメの聖地として名高い。人気アニメの舞台になったことから「聖地巡礼」に訪れるファンが続出。懐の深い同社ではアニメと「神田祭」とのコラボも実現させた。また、フェイスブックやツイッターの他、LINEにも公式アカウントがあり、キャラクターのLINEスタンプまであるのだからスゴイ。

 これは、伝統文化も時代に合わせて革新を続けるべきという、大鳥居信史宮司のお考えに基づくものだろう。人々に愛され続け、未来に継承していくには、イマドキの感覚も柔軟に取り入れる必要がある。

 このたび境内に、国内の参拝者や海外からの来訪者に日本の伝統文化の魅力を感じてもらう場として、「文化交流館」が開館した。ライブやイベントが開催できる700人収容可能な「神田明神ホール」をはじめ、土産物店やカフェの他、「EDOCCO STUDIO」を併設。ステージのある多目的スペースで、お食事と伝統芸能のショーを楽しめる企画や直会が開催される。

 我田引水だが、筆者が役員を務める弁当製造販売会社「神田明神下みやび」も、社名からお察しの通り明神様と無縁ではない。同社裏手の男坂を下りた神田明神下が創業地で、現在も日本料理店「神田明神下みやび本店」と笹の葉1枚に包んだひと口寿司(ずし)の専門店「笹一葉本舗」を構える。ご近所というだけでなく、大変ご厚誼(こうぎ)にあずかっている。前述の商品「笹一葉」も「明神名物」と名乗るお許しを頂戴したし、折々には清水祥彦権宮司におはらいをしていただいたり。他にさまざまなご縁もあり、同施設にも関わらせていただく運びとなった。先日、某業界の重鎮の皆さまのお集まりが地下のスタジオで開催された際は、ケータリングを担当させていただいた。

 真新しい厨房をお借りできるとはいえ、食材だけでなく食器や調理器具など全て運び込んだ。内容は、先付、前菜、向付、煮物、焼物、油物、お食事の江戸前握り寿司と留椀、水菓子。和食は器だけでなく紙や葉などの掻敷(かいしき)も必要だし、焼物は杉板焼きにするなど、一つ一つこだわった会席料理を店外で提供するのは、並大抵のことではない。だが、苦労のかいあって評判は上々。琴と三味線の演奏や和を意識したショーもあり、世界遺産和食も含め、「日本文化を体験できる場所」というスタジオの役割が理解できた。

 同館が日本文化の発信基地として輝き続けるよう願うと共に、われわれも食の分野でその一助を担いたい。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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