【竹内美樹の口福のおすそわけ 255】海の向こうの「和の心」 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹

  • 2019年1月1日

 1年の始まり、元旦。かつてこの日は、家に歳神様をお迎えするという意味があった。歳神様とは、新しい年をもたらし、その年に作物が豊かに実るように、家族が皆元気で暮らせるようにと約束をしてくれると考えられていた。お正月に飾られる門松も、歳神様を家に迎え入れるための憑代(よりしろ)という役割を持っていたが、今ではすっかり形骸化されてしまった。

 お正月にまつわるさまざまな習慣が廃れていく中で、唯一健闘しているのがおせち料理だろう。歳神様にお供えし、お裾分けをいただく、いわゆる神と人との共食いという意味合いは薄れたかもしれないが、縁起物を食すなど、少なからず食文化の伝統は健在だ。

 いまだに母親から「飲んでばっかりいないで、ちゃんとマメでいるように黒豆食べなさい」なんて言われながら、家族でおせちを囲むひとときは、今年も平穏に新年を迎えられたのだという安堵(あんど)感に満ちている。

 そう、つまりホッとするのだ。帰国子女の母がアメリカでお料理を覚えてきたため、味覚が比較的洋風な筆者でも、お雑煮の出汁(だし)のうま味にウットリし、日本人で良かったぁ~と思う。そんなホッとするような気持ちを海外でも味わえたら、スゴクうれしい。それが実際に存在するのだ。

 それはベトナム・ホーチミンの「ホテル・ニッコー・サイゴン」である。深いバスタブがある快適な客室、マッサージ技術の高いスパもうれしいが、何といっても朝食ブッフェが最高!

 例えば卵料理は、目玉焼きやオムレツ、エッグ・ベネディクト、ポーチド・エッグなど、10種類ものメニューの中から目の前で作ってくれるスタイル。シリアル・コーナーには、キヌアやチアシードなどはやりのスーパーフードも説明付きで置いてある。ハムやチーズ、パンの種類も多く、ワッフルやクレープも焼いてもらえる。チャーハンや焼きそばといった中華料理もあれば、ベトナムのサンドイッチ「バインミー」やベトナムの麺「フォー」を作ってくれるコーナーも。フルーツやケーキ類も豊富で、ヤシの実をくり抜いたココナッツ・ジュースまで並んでいるのだ。

 中でも特筆すべきは、和食の充実度だろう。日系ホテルでもこれだけの品ぞろえは珍しい。ご飯はもちろん、お味噌(みそ)汁だけでなく、お吸い物もあり、肉じゃが、カボチャの煮物、なます、葱(ねぎ)、味噌、蕎麦(そば)、煮玉子、ほうれん草のおひたし、冷ややっこ、納豆、お漬物などなど。鰆(さわら)を焼いていたオープンキッチンには、日本人シェフの姿も。

 お正月にはこのブッフェに、おせち料理やお雑煮も並ぶそうだ。ロビーでは餅つき大会もあり、日本にいるより日本的なお正月を迎えられるとの評判。これも山田晃子副総支配人はじめ、日本人スタッフの「和の心」のおもてなしがなせる業だ。いつも「お帰りなさいませ」と出迎えて下さる山田女史の笑顔を見るたび、旅先の緊張感が解け、ホッとして温かい気持ちになる。いつかきっと、お正月に訪ねてみたい。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
 
 
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