前号に続き、野口観光の「HAKODATE 海峡の風」について。三つの異なるコンセプトの食事処から選べる夕食、筆者は野口秀夫社長おススメのWine&Sushi会席「Blue Seasons」へ。
ジャズが流れ、シックな雰囲気の店内は、まさに大人の空間。正面奥の大きな窓に向かって、12席のカウンターがある。反対側には、それぞれにのれんがかかり、壁に大きな半透明のガラスがはめ込まれた、スタイリッシュな個室が三つ。
カウンター席に座り、まずは食前酒のオリジナルカクテル「Twilight Sky」からスタート。濃い紫からピンク、やがてオレンジへと色が変わって行く様は、インスタ女子でなくとも思わず動画を撮りたくなってしまう。続く先付は、ドーム型のガラスに煙と共に閉じ込められた、アナゴの薫製。ふたを取った瞬間スモーキーな香りが流れ、目と鼻と舌で楽しめる。
白い角皿で登場した前菜は、洋食かと見紛う盛り付け。グラスに入った真イカの沖漬け、英字新聞を模したワックスペーパーに包まれた「大学いも風カボチャの塩チュロス」のほか、「トキシラズのお浸し生姜(しょうが)風味」や「桃の冷製スープとローズマリーのジュレ」など。洋のテイスト2品が盛られていたが、伝統的な和食とのコラボが斬新だ。
次に「OTSUKURI」と題されたお刺し身。メニューには、それぞれに合わせる調味料が記されていた。「函館産生ウニ~そのままで~ 青森産カンパチの焼き霜造り小ネギ巻き~すだちのエスプーマで~ 青森産カワハギ~自家製ポン酢で~ 噴火湾産毛ガニの洗い~自家製ポン酢で~ 津軽海峡産本マグロ~土佐醤油(じょうゆ)で~ 函館産真イカ~イカ刺し専用醤油で~」。何というこだわり! 波打った形の洋皿に繊細に盛り付けられたお造りは、超新鮮。さらに例えばレンゲ型の小皿に載ったカワハギには肝が添えられるなど、気が利いていてうれしい。
強肴(しいざかな)は松前産アワビのポワレ。アスパラガスなど夏野菜と共に洋皿に盛られ、小さなガラスのビーカーでアオサソースが添えられている。殻の上に載ったアワビを一切れ、ソースと共に口に運べば、磯の香りにうっとり。料理人歴25年という柴田雅人料理長から放たれる変化球に、圧倒されっぱなしだ。
ここで、メニューにはない、じゅんさいの酢の物が。黒いカクテルグラスに浮かんだじゅんさいの大きさに驚いていると、大沼産だと説明して下さった。大沼三湖の一つ蓴菜(じゅんさい)沼は、その名の通りじゅんさいの名産地。キュウリで巻いた毛ガニの身と黄身酢が添えられ、彩りも鮮やかだ。
御凌(おしの)ぎは、北海道でアブラコと呼ばれるアイナメと長芋の炊き合わせ。この魚は青森産だったが、レストラン三つとも、北海道と、津軽海峡を挟んだ向こうの青森県の食材を使用している。いずれもお料理のテーマは「青函」なのだ。
そしていよいよ「ザ・寿司(すし)」と題された握り寿司。朝夕のバイキング「青函市場」と併せ、次号に続く!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。