前号のおかゆに続いて、ご飯のお話。商売柄連休とは無縁の筆者だが、GW中は家族全員そろって食卓を囲むことが多かった。そんな時、わが家で登場するのが土鍋。土鍋で炊いたご飯は一粒一粒が立っていて、甘味も旨味も強くて、もう、それだけでごちそうだ。
でも、「初めちょろちょろ中パッパ、赤子泣いてもふた取るな」と言われる火加減の調整が難しいし、鍋を見張っていなければならないのも面倒。だが、ずっと中強火のままで大丈夫という優れモノの土鍋があるのだ。二重ぶたになっていて、噴きこぼれの心配もないから楽チンだ。伊賀焼の窯元「長谷園」の「かまどさん」である。2000年の発売以来、出荷台数は累計8万台以上にのぼり、現在も注文後商品が届くまで半年待ちなのだという。実は、筆者も愛用者の1人。
先日、テレビで人気の家電製品が紹介されていた。見ると、土鍋がすっぽり入った炊飯器が! それは他でもない「かまどさん」であった。スイッチ一つで簡単に操作できるとあって、ブレイク中なのだそう。
一昨年引っ越す前はオール電化のマンションだったから、土鍋を使うにはカセットコンロが必需品だったが、これならそういった住宅事情でもOKだ。
鍋&調理家電フェチの筆者にとって、垂涎モノの炊飯器「かまどさん電気」。だが、コレを知る前までは「バーミキュラ・ライスポット」がほしいと思っていた。こちらも「バーミキュラ」という鋳物ホーロー鍋がすっぽり入ったタイプ。
このお鍋、ふたと本体の接合部分の隙間が0・01ミリという高い精度を誇る日本製。究極の無水調理ができると、最長15カ月待ちを記録した人気商品で、ご飯もおいしく炊けると話題になり、ついにその炊飯器が登場したのだ。
さらに、同じく入荷待ちのトースターでちまたを席巻したバルミューダというメーカーも、蒸気炊飯器「ザ・ゴハン」をリリースしており、現在こだわりの炊飯器として三つどもえの戦いの様相を呈している。
いずれも炊飯器市場に新規参入したメーカーだが、だからこそ大手製品とは逆転の発想でヒットしているのだ。
大手は南部鉄器の羽釜や本土鍋といった内釜の材質に工夫を凝らし、白米や玄米のみならず米の銘柄まで炊き分けるなど、新機能をどんどんプラスすることで市場のシェア獲得を目指してきた。一方、新興勢力は極力余分な物をそぎ落としており、3社とも保温機能さえついていない。保温用のふたがない方がおいしく炊けるということと、やはり保温したご飯はおいしくないというシンプルな理由らしい。
こうしたトレンドは、食生活を見直し、伝統的な食文化、食材や調理法の継承を呼びかける運動「スローフード」の影響もあるのだろう。いずれにせよ、この炊飯器戦国時代に各社がしのぎを削ることで、一層おいしいご飯を食べられるようになるのでは? と、炊きたての土鍋ご飯の口福を噛みしめつつ思った。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
伊賀焼の窯元「長谷園」の「かまどさん」
「かまどさん」で炊いた白米
「かまどさん」で炊いた桜海老ご飯