【私の視点 観光羅針盤123】日本版DMOにおける合意形成

  • 2017年11月20日

 今回は、日本版DMOにおける合意形成について述べたい。観光庁の登録要件の第1番目に書いてあるように、DMOの最も重要な役割は観光地域づくりを行うことについて、多様な関係者の合意形成の中核になることだ。

 言うまでもなく合意形成とは、関係者が官民を超えて、業種を超えて、地域を超えて、観光地域づくりの目指す姿や理念を意思統一し、その実現のための戦略に基づきブランドの確立などの事業に一緒に取り組む手続きだ。

 具体的には、多様な関係者間で観光地域づくり戦略の共有を図り、その戦略に照らして地域における取り組み不足や重複などの調整を定期的に実施する。例えば、景観形成や品質向上など地域が観光客に提供するコンテンツなどを維持改善する取り組みだ。

 しかし、合意形成は簡単ではない。観光関係者だけでも難渋しているのに、官民など多様な団体が集うDMOではなおさらだ。まして、広域になれば一層困難だ。各地のDMO、とりわけ行政主導で組織づくりが先行したところは、皆悩んでいる。

 こんな悩みを持つ地域のために、筆者が顧問をしている「日本版DMO推進研究会」では合意形成のモデルである「(一社)八ヶ岳ツーリズムマネジメント」と「(一社)雪国観光圏」の活動を直接勉強してもらう現地セミナーを開催した。

 現地では、官民の当事者からこれまでの活動を聴き、合意形成の場である戦略会議を半日たっぷりと傍聴してもらった。戦略会議とは、理事会や総会など意思決定の場とは別に、事業全般の内容を論議するために毎月開いている場だ。

 戦略会議には、数十人近い官民の担当者が参画し、座長のリードのもと事業の課題を徹底的に議論する。また、滞在プログラム、2次交通など特定のテーマで事業を進める分科会があり、会議ではそのリーダーから報告された進捗状況についても議論する。

 ちなみに、戦略会議座長は八ヶ岳が小林昭治さん、雪国が井口智弘さんだ。分科会のリーダーはいずれも旅館経営者やガイドなどが担う。すべて、地域に根差した本業を持つ民間人(「観光地域づくりマネージャー」と称する)だ。決して公募などはしない。

 各地から参加した延べ60人のDMO関係者は、官民の参加者全員が活発に発言し、最後には座長が見事に取りまとめる仕組みにびっくりしていた。また、厳しい意見は言うがバックアップに徹する行政の立ち位置にも感心していた。

 筆者は、両地域の関係者と伴走し、理念や戦略と異なる方向に進まないようにアドバイスするメンターとして、10年近く毎月通っている。この経験から、合意形成には地域から信頼された志高い民間人を中心とした平場の論議を重層的に愚直に積み重ねるしかないと、確信する。

 (大正大学地域構想研究所教授)

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