地域における観光客受け入れのためのガイドライン策定が各地で進んでいる。エコツーリズムの領域では、環境保護等の観点から環境負荷軽減の目的で、希少性や守るべき理由、受け入れ可能人数の制限や場所・時期・装備等の条件を明確にする流れが定着してきた。参加者がガイドの案内に従って、ルールを守りながら楽しむというスタイルの増加は、持続性の観点からも非常によい傾向だ。
同様のルールは昨今、集落での滞在においても必要となってきている。教育旅行や民泊の受け入れが一般観光客へと拡大するケースや、古民家を改修して宿を提供するケースが増加する中で、参加者に対して一定のルールの理解を求める必要性が高まっている。教育旅行の場合は、事前に学校側に条件を伝えてルールを順守してもらうことが可能であったが、一般観光客を受け入れる場合は前提の保証は約束されない。特に、インバウンド客を含む受け入れを拡大する際には、より丁寧なガイドライン策定やその徹底が急務である。
集落滞在におけるガイドラインとして、事前に参加者と共通認識にしておきたいポイントは大きく分けて三つだ。まず(1)「集落は生活の場」であること。そこには日々生活をしている方がいる中で、その生活の時間の流れを乱してはいけない。例えば、写真を撮る際には会釈しながら撮影の可否を確認する等の配慮が必要となる。また、むやみに立ち入らないことも重要だ。次に(2)「集落の精神性を重んじる」ことだ。神社やお寺・お社・古墳・お地蔵さん・御嶽・井戸等は、集落の方々が大事にしてきた心の拠り所であり、参拝や見学には一定のルールがあることを理解してもらいたい。最後に(3)「交流の確実性はない」ということ。地域の方との交流をプログラムに組み込むこともあるが、交流先の方の体調や天候等の理由で受け入れが難しくなることもあるため、その点を理解しておく必要がある。ただ、受け入れ側も適切なプランBを準備して代替案を提示することも前提としておく必要がある。
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