インバウンドマーケットの再開が目覚ましくなってきた。ようやく筆者自身も3年ぶりの海外渡航ということで、JNTO主催のオーストラリア3都市での商談会に久々に参加してきた。コロナ前からも期待されていた市場の一つが積極的に動いてくれることは非常に興味深いことである。
このオーストラリア市場を簡単に整理してみると、コロナ前の2019年の1人当たりの旅行支出額は24万7868円と全市場の中でも1位で、平均滞在日数も12.9泊とゆっくり、じっくりと日本を楽しんでくれていたのが特徴である。価値があるものにはお金を払うことをいとわないということもありがたい傾向だといえる。
日本への渡航は約10時間かかるものの、日本の20倍という国土面積を持ち、普段から国内でも5~6時間かかるような移動をしているオーストラリア人からすると、この10時間は大きなストレスではないという感覚を持っている。19年には年間約61万人が訪日、18年対比でも12.7%増と増加傾向にあったのも特徴である。
今回の商談で感じた傾向を伝えていきたい。まず日本の自然、文化への興味関心の高さである。関西やローカルな場所で、自然や文化に触れあいながらできる体験に関してかなりの興味を示していた。属性によって興味は異なり、若いカップルはより自然の中でアクティブに過ごす時間の提案を期待しており、シニアのグループは地方でゆったりとした時間を過ごしながら、伝統工芸や文化や地域の人との交流を堪能したいといった需要が高いのも特徴であった。
これらの需要は以前の訪問時からも感じていたが、全般的によりホンモノ思考が高まっている。以前は茶道や着物体験、忍者といったものへの興味関心が高かったのに対して、その地域ならではの体験、日本の中でもなぜその地域なのかがきちんと説明できるかどうかがカギになってきているように感じる。また、良いものであれば、時間をかけてでもそれを堪能するために訪問したいといった意向が強まっているのも特徴として挙げられる。
これらは、今後インバウンドの回復において、持続的な成長を期待する地域にとっても朗報といえるだろう。訪日のリピーターも増えていることや、初めて来訪する方においても、徐々にSNSや既来訪者からの情報、旅行会社からの情報がより具体的で個人の趣味嗜好にマッチしたものが届くようになっているがゆえに、より良いものを求める傾向が高くなっていると考えられる。
豪州だけでなく、欧米系でもこれらの傾向はより強まっているとJNTOの各事務所の方からも情報をもらっている。アジアにおいてもリピーターはホンモノ思考が高まっていることを考えると、各地域の受け入れ体制づくりにおいて、よりこれらを考えた展開をしていくことが期待される。大変だったこの3年で良い商品をつくってきた地域が報われる時がやってきたに違いない。
(地域ブランディング研究所代表取締役)