【私の視点 観光羅針盤 358】異常気象による世界の分断化 石森秀三


 地球温暖化に伴う異常気象が世界各地で深刻化している。パキスタンでは豪雨に伴う大洪水によって国土の3分の1が水没し、アフリカでもナイジェリアや南スーダンでは豪雨の後で大規模な洪水に襲われている。一方で、アフリカ東部では大規模な干ばつが生じており、ケニアの保護区では食べ物を失った野生動物のために地元の自然保護団体が6月から毎日朝夕の給餌活動を続けている。気候変動の特徴は極端な異常気象がさらにひどくなることといわれている。

 異常気象に伴う自然災害はさまざまだが、特に農業などへの被害が甚大だ。アフリカ開発銀行の分析では域内の気候変動による経済損失は1人当たり国内総生産(GDP)の伸び率を最大で15%押し下げると分析している。WFP(世界食糧計画)は今年2月にアフリカ東部(エチオピア、ケニア、ソマリアなど)で1300万人が厳しい飢えに直面していると発表している。
 地球温暖化に伴う被害が深刻化する中で、11月6日から国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトで開催された。その直前の10月に欧州で環境活動家による抗議活動が活発化した。

 ロンドンのナショナル・ギャラリーでは活動家がゴッホの「ひまわり」にトマトスープをかけ、「芸術と命、どちらが大事なのか」と叫んだ。ドイツ・ポツダムの美術館ではモネの絵画にマッシュポテトを投げ付け、「私たちは気候変動で破滅を迎えている。食料をめぐる争いが起きたら、絵には価値がない」と叫んでいる。

 欧州の環境活動家による過激な抗議の背景には、気候変動対策の行き詰まりがある。世界の温室効果ガス排出の約8割は先進国と中国、インド、ロシアなどの20カ国・地域(G20)が占めており、昨年英国で開催されたCOP26では各国が産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える目標で合意した。

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機が大きな逆風になり、各国が化石燃料依存を強め、脱炭素社会の実現が停滞している。壊滅的な気候変動を防ぐために温室効果ガスの大幅削減加速が不可欠な状況である。

 アフリカ全体の温室効果ガスの排出量は世界の4%以下で、多くの途上国には温室効果ガスを蓄積させてきた先進国の「つけ」を払わされているとの不満がくすぶっている。先進国側は途上国に対して官民合わせて年間1千億ドルの気候資金支援を2025年まで続けることを約束しているが、現実には目標額に届いておらず、途上国側の不信感が増大している。

 日本はウクライナ戦争の以前から石炭火力発電への依存を継続し、温暖化対策に後ろ向きな国として国際的に批判されている。国際NGO「気候行動ネットワーク(CAN)」は地球温暖化対策に消極的な国に贈る「化石賞」に日本を選んでいる。日本の観光業界は再生可能エネルギーに関わるツアーなどを企画して、地球温暖化対策の重要性をアピールすべきであろう。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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