【私の視点 観光羅針盤 313】燕三条・工場の祭典の挑戦 吉田博詞

  • 2021年12月6日

 ものづくりをツーリズム化していく発想は話題には上がっていくが、なかなか形にしていくのは難しいものだ。わざわざ工場を見せるのはタブー視され、職人は昔気質の方も多く、仕事の合間に話しかけられて邪魔されるのを嫌がる傾向も強い。また、部外者を入れるとなると危険が伴うことや、片付いていないものを見せることに対して不安を抱くこと等も懸念事項として挙げられる。そんな、ものづくりの現場で先進的な取り組みで注目されているのが新潟県の燕三条エリアである。

 新潟のほぼ中央にある燕市、三条市の二つの市をまたぐエリアは、信濃川の流れる場所に立地しており、古くから農耕文化が栄えてきた。信濃川の洪水で苦労をしてきた中で、江戸時代から和釘の製造が副業として推奨されてきたことが、金属加工産業の400年以上の歴史の背景である。その後、時代の変化に合わせて製造を発展させ、日本一の金属加工のエリアとして認知されるに至っている。ただ、事業継承等の課題もあり、燕三条においても閉鎖を余儀なくされる工場も出てきている。

 その状況を打開しようと活動が始まったのが、「工場の祭典」という企画である。工場を開放してもっと回遊してもらおうと、2013年から100軒以上の工場が参画し、5万人以上が来訪する一大企画にまで成長している。普段は口数の少ない職人さんも、この工場見学では、作っているものを興味津々と見学してくれる来訪客との会話を楽しみ、交流に生きがいを感じて笑顔があふれているという。その効果を理解した工場ではオープンファクトリーというスタイルで、年間を通じて工場見学を可能としていく流れを作り上げ、10軒以上の工場が受け入れをしている。

 20年のコロナ禍においては、この企画を全て動画配信するスタイルで継続させ、21年の今年は工場見学を控える代わりに、「Tsubame―Sanjo Factory Museum」という集合型ミュージアムのかたちで実施につなげている。この進化の過程も評価され、今年度第13回観光庁長官表彰を受賞している。

 今後はさらに三つのKOUBAとして発展に向けて動いている。製品を生み出す(工場)、農業に取り組む(耕場)、地元の産品に触れ、購入できる(購場)の整備を加速させていくようだ。この実現のために、魅力をより理解したい方に体感してもらえるスペシャルツアーやカスタムメイドツアー等も整え、燕三条の職人が紡ぐストーリーからのファン拡大でさらなる消費拡大を描いている模様。

 実行委員長の山田立さんを中心とした方々が、オモイを結実させ、まちの未来に向けてできることを進化させ続けていく姿は大きな勇気をもらえる。KOUBA巡りを中心として、まちがさらに輝きを増していく流れを注目していきたい。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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