【私の視点 観光羅針盤 310】岸田政権と日本の未来 石森秀三

  • 2021年11月8日

 衆院選が投開票され、自民党が単独過半数を獲得し、自公与党で絶対安定多数を維持した。日本は内憂外患の数多くの国家的課題を抱えて、大きな曲がり角に立っているが、盛り上がりに欠ける総選挙だった。岸田政権の継続が決まったが、日本の未来、日本観光の未来に対する不透明感や不安感を抱えたままの続投である。

 岸田文雄首相は自民党総裁選の際に「分配なくして、次の成長はなし。成長と分配の好循環を実現する」と主張して、アベノミクスで広がったとされる諸々の格差を是正するために、新自由主義的な政策の転換を図る「新しい資本主義」を掲げた。

 具体的には、富の再分配の柱となる「令和版所得倍増」や「金融所得課税の強化」などを提唱したが、既存の保守層(与党、財界、富裕層)からの強い反発で党の公約に盛り込めなかった。

 岸田首相は衆院選の前に首相直属の機関として「新しい資本主義実現会議」を設置して、ポストコロナ時代の経済社会ビジョンを策定し、具体的な政策の立案を行う体制を整えている。すでに15人の有識者が会議メンバーに選ばれ、会議が開催されている。一方で、デジタル田園都市国家構想実現会議や全世代型社会保障構築会議などの設置も打ち出されており、重要な政策提言組織が乱立気味である。

 観光立国政策に焦点を当てると、安倍政権や菅政権でブレーンとして重用され、インバウンド観光立国政策の旗振り役を担ってきた竹中平蔵氏やD・アトキンソン氏などは「新しい資本主義実現会議」に入っていない。

 この実現会議のメンバー構成を見ていると、観光立国を強力に応援する有識者はいないようである。さらに自公政権の中枢で長らく「観光立国」政策を力強く推進してきた菅義偉氏と二階俊博氏が官房長官・首相や自民党幹事長などの要職を離れたので、今後の観光立国政策は大きな変化を被る可能性が大である。

 8年9カ月に及んだ安倍政権の下でインバウンド観光立国政策は運良く大成功を収めたが、コロナ禍を経験した以上、観光立国政策の大転換が必要になる。

 政界では「長期政権の後では短命政権が繰り返される」という話が語られている。小泉純一郎政権は約5年半の長期政権だったが、その後の安倍第1次政権、福田康夫政権、麻生太郎政権はそれぞれ1年で交代している。安倍第2次長期政権の後で菅義偉政権も約1年で交代しており、岸田政権はどうなるであろう?

 同様に「参院選の敗戦を契機にした政権交代も多い」とのこと。1998年の参院選惨敗で橋本龍太郎首相が退陣、2007年の参院選敗戦で安倍第1次政権が交代、10年の参院選に敗れた旧民主党政権が退陣に追い込まれた。さて、岸田政権は来夏の参院選に勝利できるだろうか?

 日本は内憂外患のさまざまな国家的課題を抱えており、岸田政権として「新しい資本主義」のビジョンを明確に示し、その実現のために「信なくば立たず(国民の信頼なしに政治は成り立たない)」を実践すべきである。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 

 
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