【私の視点 観光羅針盤 278】ジェンダーギャップの国・日本 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三

  • 2021年3月15日

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、2月に「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という女性蔑視発言をして批判され、責任を取って会長を辞任。後任には橋本聖子氏が就任した。森前会長の女性蔑視発言は国際的非難を浴びるとともに、日本におけるジェンダーギャップ(男女格差)問題に火を付けた。

 世界経済フォーラム(WEF)は毎年「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート」を公表している。2020年のレポートでは153の国々が対象で、男女格差の少ないベスト10は、(1)アイスランド(2)ノルウェー(3)フィンランド(4)スウェーデン(5)ニカラグア(6)ニュージーランド(7)アイルランド(8)スペイン(9)ルアンダ(10)ドイツ―の順。

 日本は過去最低となる121位であった。要するに日本は世界でも最低レベルの男女不平等の国という評価である。

 男女格差レポートは4分野(経済、教育、政治、保健)における男女比の変数(勤労所得、管理職、高等教育就学率、平均寿命、国会議員、閣僚など)に基づいてランキングされている。日本の場合には勤労所得で男性賃金100に対して女性賃金74、管理職に占める女性の割合で米国40%、英国36%に対して日本15%、国会議員での女性比率は10%など。

 日本では歴史的に男性優先の封建的な家父長的思考が社会に残っているために、さまざまな男女格差の是正は容易ではない。ようやく16年に女性活躍推進法が施行されるとともに、女性の管理職比率の数値目標などを盛り込んだ男女共同参画基本計画が策定されているが、それほど効果を上げていない。

 女性管理職や女性議員を増やすことも大切であるが、一番の問題は女性従業者の56%が非正規雇用である点だ。

 旅行・観光業界は本来、女性従業者の活躍によって大きく支えられているが、現実には旅行需要の激減によって、真っ先に女性従業者が解雇されがちである。コロナ禍で旅行・観光業界は会社存続が真剣に検討されるほどの危機的状況に追い込まれているために、女性従業者だけに特別な配慮を講じ難いのも事実である。

 欧州諸国で例外的に男女格差ランキングが76位と低位のイタリアでは3月8日は「ミモザの日」「フェスタ・デラ・ドンナ(女性の日)」とされ、男性が母親や妻、女性の友人や同僚などに日頃の感謝を込めてミモザを贈る。欧州では春の象徴カラーは黄色であり、黄色いミモザの花は厳しい冬に終わりを告げ、暖かい春の到来を知らせる「幸せの花」だ。

 1904年3月8日にニューヨークで女性労働者が婦人参政権を求めるデモを行ったことが起源で、75年に国連は3月8日を「国際女性デー」と定めた。苦境にあえぐ旅行・観光業界ではあるが、せめても女性従業者に日本の春らしく桃の花を贈ることで職場に幸せを招き寄せる心遣いも必要であろう。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 

 
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