【私の視点 観光羅針盤 267】ダイナミックプライシング 地域ブランディング研究所代表取締役 吉田博詞


 コロナ対策で密を避ける観点からも、観光地のピークの分散化をより加速していくことの必要性が叫ばれている。これまでも休日の分散化等を制度化していくことの提唱がなされてきたが、進めていくにはまだまだ時間がかかりそうである。

 そんな中注目されるのが、曜日や時期の需給バランスによって料金を変えていく「ダイナミックプライシング」だ。航空券が日によって料金が違うことは、多くの方が既に受け入れているポイントであると思う。

 これと同じことを他の移動手段、宿泊施設・体験施設、飲食店等においても、特別企画として展開していくことができれば、もっと需給調整が可能となり、稼働の安定化につなげていけるだろう。その加速が日本の観光マーケットを大きく変えていくと期待している。

 航空券だけでなく、宿泊施設においても一部は既に導入されているが、まだまだ各種見学施設、体験アクティビティ、飲食店等での導入はこれからといったところだ。デジタルトランスフォーメーション(DX)ということが叫ばれている時代だからこそ、在庫管理・流通システムを導入して、過去のデータや各種イベント情報と絡めて需要予測と価格設定を打ち立てていければベストだ。

 各種流通チャネルと接続して、ユーザー特性に合わせてキャンペーンや企画を組んでいくことができれば、より先の予測や対策も可能となり、スタッフの安定稼働等に持っていけるメリットが大きい。

 ただ、多くの施設において、すぐに導入できる余裕がない状況であり、Go Toトラベルとの絡みをどうしていくのかということが課題として挙がってくるだろう。

 まず、すぐにシステム導入ができないところにおいても、過去の実績からのオフピークを予想することは可能だろう。

 平日特別プランや閑散期特別プランといったものを、アナログで組んでいくだけでも一定の効果を期待できる。少しお得感を出しながら、〇〇特別企画、〇〇特別キャンペーンといったものを組めれば、消費者のマインドをつかんで予約につなげられるだろう。とにかく、どうすれば人が動いてくれるかに知恵を絞って、反応を見ながら日々工夫・改善していければ、必ず効果は出る。

 また、Go Toトラベルがある影響で、そもそも割引が適用されている状況で人が動いている観点においては、単純に割引価格で勝負するのではなく、Go Toトラベル終了後を見据え、先述のアナログ企画を試していきながら各種企画やキャンペーンを張って、何にどんな人が反応するかの傾向をしっかりと分析していくことを推奨したい。

 今このタイミングでテストマーケティングをして、キャンペーンの打ち立て方等を検証しておかなければ、Go Toトラベル終了後が本当に大変なものになってしまう。

 各種サービスにおいてダイナミックプライシングが推進されていけば、密を避けた観光がより加速することは間違いない。その標準化の加速に期待したい。

 (地域ブランディング研究所代表取締役)

 
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