【私の視点 観光羅針盤 192】宇宙開発の未来 北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授 石森秀三


 10連休中の5月4日に日本で最初の民間単独開発の宇宙観測用小型ロケット「MOMO(モモ)」3号機が打ち上げられ、目標の宇宙空間(高度100キロ)に達した。モモ3号機は全長10メートル、直径50センチの1段式で、打ち上げ後4分で宇宙空間に到達した。

 モモを打ち上げたのは、北海道十勝管内大樹町のベンチャー企業インターステラテクノロジズ(IST)だ。ISTのオーナーは堀江貴文氏で、2013年に大樹町に設立された。

 1号機の打ち上げから約2年。3度目の試みで民間単独では国内で初めて、宇宙空間に達した。さまざまな困難を乗り越えて、民間単独の努力で宇宙空間に到達できることを示した意義は大きい。

 現在、世界的に宇宙開発の動きが活発化しており、特に21世紀に入ってから中国が国を挙げて宇宙開発に本格参入している。中国は今年1月に世界で初めて月の裏側に無人月探査機を着陸させた。月の裏側は地球から直接見えず、科学的に未解明であるが、有望な地下資源が埋蔵されている可能性が高い。

 一方、米国は11年にスペースシャトルが退役してから有人宇宙旅行が絶えていたが、その間に民間の宇宙企業が勃興している。例えば、宇宙ベンチャー・スペースX社(イーロン・マスクCEO)は大型宇宙船「スターシップ」を開発中だ。全長118メートルで、垂直に着陸し、繰り返し使用可能を目指している。すでに民間初となる月周回旅行の計画を公表して、世界の富豪たちと契約を結んでいる。

 日本では08年に宇宙基本法が施行され、16年に「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)」が制定された。

 日本のISTは世界的に急成長が見込まれる超小型人工衛星打ち上げ市場への参入を目指している。ISTは「価格破壊」を掲げて、市販品を活用してコストを圧縮した小型ロケットでも宇宙空間に到達できることを示し、世界の宇宙産業にインパクトを与えた。

 超小型衛星の打ち上げは、14年に世界で年間に100機を超え、20年ごろには年間500機を超えると予測されている。 

 ISTのモモ3号機は大樹町の実験場から発射された。大樹町は1987年に北海道の航空宇宙産業基地構想の候補地に選ばれ、95年に千メートルの滑走路を有する多目的航空公園を開園させた。その後、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携協力拠点「大樹航空宇宙実験場」や展示施設「大樹町宇宙交流センターSORA」などを整備し、「宇宙のまち大樹」を目指している。

 米国と中国による「宇宙2強時代」を迎えて、宇宙開発が活発化しており、宇宙旅行が夢物語ではなくなっている。
 今後の世界の動きに注目していきたい。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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