
2018年に日本を訪れた外国人旅行者は3119万人で、過去最高を記録した。13年に1036万人に達して以後の5年間のインバウンド増加は驚異的で、1341万、1974万、2404万、2869万と続き、昨年ついに3千万人を超えた。
昨年の前年比伸び率は8.7%で、月別の訪日外客数を見ると、1~6月の半年間は極めて順調な伸び率で月平均15.8%であったが、6月と7月には大阪府北部地震や西日本豪雨があり、9月には北海道胆振東部地震や台風などで伸び率が鈍化し、7~12月の月平均伸び率は2.2%止まりだった。
昨年7~9月に発生した異常気象がなければ、インバウンドはもっと大きく伸びたといわれている。しかし世界気象機関(WMO)は、気候変動の加速によって強烈な異常気象が発生する頻度はさらに増えると指摘しており、今年もまた「気象凶暴化」や「気候劇症化」に悩まされる可能性が大である。
昨年の国別の訪日外客数では、(1)中国838万人(2)韓国753万人(3)台湾475万人(4)香港220万人(5)米国152万人(6)タイ113万人―などが上位を占め、相変わらず東アジアからが全体の73%を占めている。
ところが前年比の伸び率では、(1)ベトナム26.0%(2)ロシア22.7%(3)イタリア19.2%(4)スペイン19.1%(5)フィリピン18.8%(6)タイ14.7%(6)インド14.7%(8)中国13.9%(9)フランス13.5%(10)インドネシア12.7%―で、東南アジアと欧州各国の伸び率が目立っている。
アジアで最大手の格安航空会社(LCC)エア・アジアを追う、インドネシアのLCCライオン・エアは昨年12月にバンコク―成田便を開設し、今年1月にはバンコク―中部国際便、3月にはバンコク―関空便を相次いで開設予定なので、東南アジアからの訪日外客は今後も増加の一途であろう。
また、欧州エアラインとして日本路線の最大手フィンランド航空は、すでに成田、関空、中部国際、福岡とヘルシンキを結ぶ路線をそれぞれ開設しているが、今年12月から新たに新千歳―ヘルシンキ便の開設を決めている。北海道と欧州を結ぶ定期航空路線の運航は、KLMオランダ航空が02年に新千歳―アムステルダム便から撤退して以来17年ぶりとなる。
政府はすでに19年度の観光庁予算を前年比2倍以上で過去最大となる711億円と決めている。そのうち、485億円は今年1月7日から出国旅客に課された国際観光旅客税(出国税)が占めている。20年のインバウンド4千万人を目指して、民産官学の協働によって貴重な国費を有効に用いて、ホストとゲストの双方が幸せを感じることができ、歓び交わることのできる「感幸」と「歓交」の実現を念じている。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)