世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2018」が終了した。主催者によれば、世界136の国と地域から過去最高の1441の企業、団体が出展し、期間中の来場者数は同じく過去最高の20万7千人に達したという。
今年のテーマは、一般消費者向けが「見つけよう。旅の“新しいカタチ”」、業界関係者向けが「創ろう。ツーリズムの“新しいカタチ”」だった。テーマ通り、ブースではVRなどで旅の新しいカタチを発見・体験できる場が提供された。
国土交通大臣認定の13観光圏でつくる全国協議会も、昨年に続いて出展した。「UNDISCOVERED JAPAN」をテーマに、インバウンド誘致の取り組みを紹介するとともに、世界水準のDMOのあるべき姿についてシンポジウムを開催した。
今年は、雪国観光圏が「ジャパン・ツーリズム・アワード」大賞、八ヶ岳観光圏がDMO推進特別賞を受賞したおかげで、どれも盛況だった。その中で、大きな手ごたえを感じつつも、ブランド力のさらなる強化の必要性を痛感させられたのが商談会だった。
主催者によれば、会期中の商談は登録システムを刷新したこともあって7450件に達したという。協議会では、雪国観光圏ブランドマネージャーのフジノケンさんと湯沢町在住のパトリックさんに窓口を一任し、商談会に当たった。
商談は、観光圏共通ターゲットである欧米豪を中心に16件実施した。全体として、昨年同様全国横断的な取り組みに対する関心は高かったが、今年はプレミアムな日本を提供できるという切り口で説明したせいか、コンテンツの質の中身に食いつくバイヤーが多かった。
例えば、冬=スキーというイメージで知名度抜群のニセコ観光圏は、「雪の中のラフティング」という新たなコンテンツに鋭い反応があった。また、「千年のかくれんぼ」という上質なコンセプトが定着したにし阿波観光圏祖谷渓は、相変わらず手ごたえが良かった。
しかし、セラー固定の自由商談の時間帯では金沢などメジャーな観光地にバイヤーが集中し、観光圏のブランド力の非力さを痛感した。セラーが増える一方でバイヤーとのマッチング競争がますます厳しくなる状況を踏まえると、ブランド力の強化は喫緊の課題だ。
幸い、協議会では前述のようにブランディングを評価された雪国観光圏や、この10年でインバウンド宿泊観光客を30倍近く伸ばしたにし阿波観光圏などトップリーダーが全体をけん引している。また、会場では多くの企業、団体から提携の提案をいただいた。
観光圏協議会顧問を務める筆者は、そのネットワークを着実に広げながら、次世代ブランド観光地域としての観光圏のさらなるブランド力強化を急ぎたいと思う。
(大正大学地域構想研究所教授)