【私の視点 観光羅針盤 143】世界水準の観光案内所 清水慎一


 4月上旬、フランスのブルゴーニュ地方などを訪れた。今年に入って、メルボルン、イタリアに続いて3回目の海外旅行だ。すべて自分で手配し周遊するから、一観光客の視点でさまざまなことに気が付く。特に、現地の観光協会の顧客対応は大変勉強になる。

 例えば、旅行前に観光情報を収集するためのホームページの作り方だ。多言語対応もさることながら、自然や歴史・文化、公共交通など暮らしの情報が丁寧に掲載されている。名所旧跡や施設だけではないので、現地のまちのイメージをとらえやすく、参考になる。

 一番感心するのは観光案内所だ。分かりやすい場所に立地し、スペースもゆったりとしている。パンフレットはテーマや観光客ニーズに応じて並べられ、必要な情報が容易に手に入る。スタッフの対応も優しくてきぱきとして、プロとして信頼がおける。

 1月に訪れたメルボルンの観光案内所は市街地の中心フェデレーションスクエアにあって、遠くからでもすぐ分かった。広場側の入り口では、赤いチョッキを付けた係員が簡単な案内に対応してくれ、広々とした地下の中央カウンターでは6人の職員が個別の問い合わせ、手配に応じていた。

 壁面のパンフレット類は、市内、周辺地域、ビクトリア州の順に、しかもイベント、ショッピング、公共交通、ツアー商品などテーマ、顧客ニーズに応じて整然と並んでいる。ユニークな情報もたやすく入手できた。わが国のように自治体別には並んでいない。

 当然、ワンストップサービスだから予約手配もできる。奥には、メルボルンやビクトリア州のぬいぐるみなどの土産物、グッズ、書籍が所狭しと並び、すぐ買える。今回訪れたリヨン、ランス、ボーヌの案内所も全く同様で、世界水準とはこういうものだと痛感した。

 観光庁によれば、JNTOに認定された外国人観光案内所は911あるという。ここには、多言語翻訳システム機器やVR体験、デジタルサイネージ、スタッフの研修など整備充実などにかかる経費が一部補助される。新設の国際観光旅客税が充当されるという。

 問題は設備や施設、おもてなしもさることながら、真に観光客視点の対応になっているかだ。分かりにくい場所にあって、中は狭く、パンフレットが雑然と並べられ、しかも予約手配は一部しかできないでは、決して観光先進国に仲間入りしたとは言えない。

 少なくとも、カテゴリー1の観光案内所は、欧米とそん色のないプロのレベルでなければいけない。玄関口の対応によりわが国に対する印象が変わるからだ。観光案内所が世界水準かどうかでDMOや観光協会の本気度は測られると、筆者は常々思う。

(大正大学地域構想研究所教授)

 
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