四国で最初に日が昇るまち阿南市は、徳島県の最東端にあり、気候温暖なまちだ。「青色発光ダイオード」で有名な日亜化学工業の本社があるまちとしても知られている。しかし、人口は減少し、市街地は空洞化している。過日、そこで「あなん未来会議」が開催された。地域創生には長期の取り組みが必要だ、との岩浅嘉仁市長の発案で始まった会議で、見据える焦点は2040年だ。筆者が勤める大正大学が地域人材育成の連携協定を結んでいるご縁で、委員として参加した。
多士済々な方が集まったせいか、熱意あふれる発言が。阿南工業高等専門学校助教の池添純子さんからは、住民が地域で暮らし続けられるために、休校の校舎で自ら育てた農産物などをみんなで売り買いするとともに、お遍路さんにも食べてもらうという提案があった。スポーツジャーナリストの二宮清純さんは、スポーツ施設に医療・介護施設、保育園、スーパーマーケットなどを併設して、暮らしに根差したスポーツを普及させたいと提起した。教育の観点でしかスポーツを捉えないわが国は周回遅れだと、手厳しかった。
座長の床桜英二さんは、平時はお遍路さんのおもてなしができる民泊として活用する一方、近い将来発生する確率の高い南海トラフ地震・津波災害時は避難所として活用するという、日本初の「シームレス」民泊の取り組みを紹介。
初めて参加した筆者は、バラバラな縦割りの取り組みではなくお遍路さんなど来訪者も含めて「みんながつながる」ことで、地域の暮らしを持続させたいという具体的な意見に、心から同感した。併せて、他地域の取り組みを踏まえながら二つ問題提起をした。
一つは、「みんながつながる」ための持続的な活動の場としての観光地域づくりプラットフォーム(日本版DMO)の構築だ。そんな場に、多様な団体や個人が業種や官民を越えて結集し、観光客など来訪者とともに豊かな地域づくりに取り組んでいる「にし阿波観光圏」の事例を説明した。
二つ目は、「みんながつながる」場としての公共空間の重要性だ。市庁舎前広場や商店街などを住民や来訪者など誰もが気軽に立ち寄れるオアシスにすれば、「みんながつながる」ことが実感できる。しかし、現状の広場や商店街はそのようになっていない。
長期的な地域創生のためには「みんながつながる」取り組みを日本版DMOで持続的に、公共空間で物理的に実現することが重要だと、筆者は確信する。そうすれば、住民、とりわけ子どもたちは人とのつながりのなかでさらに豊かに、誇りを持ちながら暮らすことができる。
最後に、二宮さんが「野球のまち阿南」を掲げているのに、公園管理者がキャッチボールを禁止しているのはおかしいと、指摘した。「みんながつながる」とは「みんなが関わる」ことだと、痛感した会議だった。
(大正大学地域構想研究所教授)