【私の視点 観光羅針盤96】デスティネーション・マネージャーの育成 石森秀三


 北海道大学大学院観光創造専攻は2007年4月に設置されたので丸10年が経った。大学院発足に当たって、JR東日本とJR北海道が寄付講座(年間3千万円)を提供して下さり、10年間にわたって毎年強力なご支援をいただいた。そのおかげで、特任教員の採用が可能になり、大学院教育の充実化を図ることができた。

 北大大学院観光創造専攻は10年間で8人に博士(観光学)号を授与するとともに、136人に修士(観光学)号を授与した。

 大学院修了者は幅広い分野で観光関係の仕事に従事するとともに、大学教員として観光学を講じている者もいる。10年間で大きな成果を挙げることができたのは関係者の非常なる尽力とともに、JR2社による貴重な寄付講座のおかげであった。

 北大は10年間の大学院教育の実績を踏まえて、今年6月から新たに履修証明プログラムとしての「デスティネーション・マネージャー育成プログラム」を開講する予定である。

 文部科学省は07年の学校教育法の一部改正によって「履修証明制度」の導入を図った。学生を対象とする学位プログラムの他に、社会人などの学生以外の者を対象とする学習プログラムを開設し、修了者に履修証明書(Certificate)を交付できるようになった。

 観光庁はすでに15年から日本版DMO(Destination Management Organization)の形成・確立を目指して、「日本版DMO候補法人」の登録を進めている。北大の履修証明プログラムは、地域資源の発掘から実際の誘客に至るまでの観光地域づくりについての専門的知識の修得とともに、実践的技能の習得に力点を置いており、「デスティネーション・マネージャー」として実践的に活躍できる人材の育成を目指している。

 そのために「特論」科目や「演習」科目だけでなく、専門的な実践力の養成を図るために「実践講習」科目の充実化に配慮している。北大観光学高等研究センターは道内のニセコ町や美瑛町などとの連携協定に基づいて観光地域づくりに協力しており、そのような実績を履修証明プログラムで生かしていくことが意図されている(問い合わせは、北海道大学メディア・観光学事務部教務担当まで)。
 インバウンド激増に伴う観光立国の本格化に対応して日本各地で一番求められているのはDMOで活躍できる優秀な専門的人材の育成である。各地の観光系大学の頑張りに期待したい。

 (北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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