【私の視点 観光羅針盤101】DMOのモデルケース 清水慎一


 「日本版DMO」の構築に関しては、国の強烈なバックアップもあり、各地でさまざまな取り組みが行われている。その結果、国に登録された候補法人は、134に達した(今年3月現在)。

 「日本版DMO」の先駆けとなる「観光地域づくりプラットフォーム」の形成に長らく取り組んでいる筆者としては、この動きは感慨無量だ。

 筆者は、行政や観光協会主導による観光施設への集客を目的としたイベントやプロモーション中心の「観光地づくり」の問題点を早くから指摘してきた。地域の暮らしを五感で味わいたいという観光客のニーズに応えられないだけではなく、観光客が回遊・滞在しないために豊かな地域づくりにつながらないからだ。

 「観光地づくり」の反省と総括を踏まえて掲げた概念が「観光地域づくり」だ。地域外の人々との観光交流から生ずるさまざまな効果、例えば経済効果などを、地域のあるべき姿の実現に向けた取り組みに生かす活動だ。

 すなわち、観光を生かして豊かな地域づくりに取り組む活動だ。

 このような、「観光地域づくり」を持続的に推進するためには、観光関係者だけではなく、農林漁業や商店街など多様な人たちが業種を超えて、地域を超えて、さらには官民を超えて連携し、「地域のあるべき姿」に向かって観光と地域づくりという両方の活動のベクトルを合わせることが大事だ。

 そのような多様な人たちが連携する場を「観光地域づくりプラットフォーム」とした。その形成を促すために、筆者は2012年に「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」を作り、会長に就任した。同じ頃、観光庁が観光圏に関する新基本方針を定めた際に、認定要件の一つとして初めて公に認知された。

 「観光地域づくりプラットフォーム」は「観光地域づくり」のかじ取り役として、ブランド戦略などのマーケティング機能と、観光交流により地域全体を豊かにするマネージメント機能を最大限発揮させる場だ。まさに、「日本版DMO」に求められる機能を先取りしたものだ。

 現実に、「観光地域づくりプラットフォーム」を推進主体に取り組んでいる八ヶ岳観光圏や雪国観光圏、にし阿波観光圏などの活動には目覚ましいものがある。ブランドの確立、地域の合意形成の仕組み、マーケティングデータの取集分析、宿泊施設の品質認証などの取り組みは「日本版DMO」のモデルだ。

 過日、観光圏や由布院、昼神温泉など「観光地域づくり」を推進している団体が中心になって「日本版DMO(観光地域づくりプラットフォーム)推進研究会」が結成された。

 5月24日に第1回のセミナーが大正大学において開催される運びである。多くの関係者に聴講していただきたい。

(大正大学地域構想研究所教授)

 
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