【特集 旅館の生産性向上策】IT活用で作業軽減と時短 フォレストグループ


石田浩二社長

ICタイムレコーダーで従業員の労働時間を管理

 フォレストグループは、神奈川県湯河原温泉の「ホテル城山」をはじめ、全国の観光エリアで16軒の宿泊施設を運営する。このほか宿泊・保養施設5軒の受託運営、レストランやケータリングなどフード事業、貸し切りバス事業、旅行業と、観光に関わるさまざまな事業に取り組んでいる。

 ホテル城山(19室)で現在取り組むのがタブレットを活用した飲食の注文受け付け。現在は準備段階で、7月中の稼働開始を目指している。当初はグループ3施設に導入し、軌道に乗ればグループ全施設に導入するという。

 客室や食事処など、飲食の席で顧客の注文を受ける際、係がその注文内容を伝票に書き、厨房やフロントに伝えるのが従来の流れ。この作業をタブレットを通して行う。係や顧客がタブレットで入力した注文の情報がそのまま宿の会計システムにインプットされ、伝票の内容を改めてコンピューターに打ち込む必要がなくなる。

 「伝票の内容をコンピューターに打ち込むのが夜の係の主な仕事となっていた。タブレットの導入で、その作業がなくなるほか、会計ミスも防げる」。同グループの石田浩二社長はタブレット導入のメリットをこう話す。

 石田社長はさらに、タブレット導入による増収効果も期待。「例えばお客さまが係を呼んでもなかなか来ないときがある。『もういいや』と注文を諦めてしまう場合があるが、手元にタブレットがあれば自分の好きなタイミングで注文ができる」。この導入により、飲料の売り上げが2割増えたというデータもあるという。

 労務管理面では、ICタイムレコーダーの導入で総務部門の作業軽減、従業員全体の労働時間短縮を図った。

 従業員が鉄道の改札のように、出退勤時にICカードを機械にかざす。コンピューターには従業員の出勤と退勤時間のデータが蓄積されるほか、1日の労働時間が自動で計算される。従来のタイムレコーダーのように、労働時間を人が計算する必要がなく、総務部門の仕事量が大幅に軽減された。

 従業員の残業時間も管理職や総務部門が一目で分かるようになった。月の累計の残業時間が25時間を超えると黄色、30時間を超えると赤で画面に表示される。赤になった従業員にはこれ以上残業をしないよう、管理職や総務部門が促す。

 コロナ禍が深刻化した昨年、売り上げの確保へ弁当の配達事業を新たに開始。近隣の一般家庭ほか、食事を提供しない同業者の旅館・ホテルも配達の対象にしている。季節の素材を生かした会席膳で、「旅館の味を自宅でも楽しめると、思った以上に反響があった」(石田社長)。

 今後について石田社長は、AI(人工知能)によるレベニューマネジメントを計画。従業員の勘と経験に頼らず、コンピューターによる販売管理で収益の最大化を図る。既にグループの1軒で先行しており、今年5月はコロナ禍にも関わらず、過去最大の売り上げを上げたという。

従業員の勤怠データが画面を通して一目で分かる(写真は一部加工しています)

「社員の幸せ」を企業理念の一つとするフォレストグループ。近年は外国人材も増え、フロントや客室係として活躍している

 
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