
道の駅ばんだい
2年前に設立されたばかりの一般社団法人ばんだい振興公社は、魅力あるまち、「愛着人口」の拡大といったビジョンをまちと共有し、地域経済の活性化に取り組む。その事業は、地域の魅力を高めるイベント開催から観光事業、農業など幅広く、町内の経済循環の一つの要になっている。
ばんだい振興公社は、磐梯町と磐梯町商工会が磐梯町のまちづくりの推進と地域経済の活性化などを目的に2021年6月に設立した公益的民間組織だ。
磐梯町は、将来の町の姿として「自分たちの子や孫が暮らし続けたい魅力あるまち」というビジョンを掲げ、「愛着人口の拡大による地域経済の活性化」を進めている。「愛着人口」とは、公社設立とともに作った造語で、磐梯町への「来訪等の有無や住民であるかを問わず、磐梯町に対して好意を持ったり、温もりを感じたり、愛しんだりといった気持ち持つ人」を指す。関係人口や交流人口など地域外の人との関わり強化のみならず、町内で暮らす地域の人々の活動も含めた活性化を目指す磐梯町の姿勢を表すキーワードだ。磐梯町の「後期基本計画」においても、「関係・愛着人口数」を令和8年に3万人とする目標を掲げている。
振興公社は、このビジョンを共有し、具体的な事業の受け皿として機能する。具体的には、これまで町外・県外の事業者に委託していたような収益事業を手掛け、その利益を町へと還元し公益事業へと投資する。この循環を繰り返すことで、町内での経済を循環させることが狙いだ。
道の駅ばんだい
設立当初は、ふるさと納税に関する業務からスタートしたが、2年半で事業を拡大、町の委託による公益事業と、公社独自の収益事業を手掛けている。具体的には、「ふるさと納税・ECサイト/商品開発」「マーケティング」「道の駅運営事業」「慧日寺・庄九郎亭運営」「農業公社」などの事業を展開している。
公社の大きな目的の一つが「10年後、20年後の、町の中心人物を育てる」(企画開発グループ・鈴木孝之グループマネージャー)こと。その取り組みの一つが、2022年度、町の委託事業として開始した「オープンカフェばんだい」だ。これは地域の若者が気軽に集まり、やってみたいこと、あったらいいなということについて話し合う場づくり。毎回テーマを設定し、アイデアや課題を参加者がシェアし、自分たちができることを創造・考えていく。今年度は、5月に「スポーツ」をテーマに開催して以降、「料理」「写真」をテーマに計3回実施し、年度内にあと3回の実施を計画している。町民以外にも門戸を開き、実際、近隣の市町村、県外からの参加者も少なくなく、「愛着人口」の増加につながっている。
「愛着人口増加」の取り組みの一つの切り口が若年層に向けたアピールだ。22年度事業として株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス等と連携して農泊体験ツアーを企画したが、思うように進まなかった事もあった。この経験を踏まえて「町を訪れ、何か見て帰るだけでは弱い。町の人と少しでも接点を持つ機会を」(鈴木マネージャー)と、23年度事業として新たに企画したのが地域との交流を主軸においた「磐梯町学生等地域課題解決活動支援業務」だ。大学と連携して学生が地域団体と交流を目的に滞在した場合、町がその滞在費用の一部を支援する。地域団体の指定はなく、行政区や農業団体、青年会といった組織はもとより、民間企業も含め広く想定している。交流は単なる視察・見学だけでなく、地域課題の解決に向けた取り組みであることが条件だ。既に1団体からの申請があり、今後、全国の大学にアプローチしていく。
鈴木氏
観光分野の取り組みも公社の大きな役割となっている。
磐梯町の中心部、町役場から近い場所に「史跡慧日寺跡」「庄九郎亭」などが集まる、いわゆる史跡エリアがある。「史跡慧日寺跡」は国指定の史跡、「庄九郎亭」は町が古民家をリノベーションしたカフェ。公社は町からこれらの管理・運営について委託を受けPRに力を入れており、年間5万人の集客を目指している。
また、ピーク時には年間110万人の来場があった「道の駅ばんだい」の管理運営も担う。来場者はコロナ禍に60万人に減少したものの、昨年は80万人に回復、売上高も前年度比57%増と大きく伸ばしており、V字回復を目指して取り組みを進める。
こうしたこれまでの町の資産を生かす取り組みに加え、新たな企画も積極的に展開。今年9月には官民共創によるイベント「フォトウォーク@ばんだい」を開催した。これは一定のコースを歩き写真撮影を行うイベントで、町内に生産拠点を持つカメラメーカーのSIGMAが機材を提供、セイコーエプソンが撮影した写真のプリントサービスを行うなど、さまざまな企業と連携して実施したことが大きな特徴だ。町内外から18人が参加、大阪や関東圏からの参加者も複数人に及んだという。
フォトウォーク@ばんだい