衆議院議員 全国旅行業協会会長 二階俊博
観光庁が設立15周年を迎えられたことを心からお慶び申し上げます。この15年間、わが国の観光立国実現に多大な成果を上げてこられた、観光関係の皆さまのご尽力に心から敬意を表したいと思います。
振り返りますと、私が観光を推進するスタートとなったのは、運輸政務次官のときに観光経済新聞社のインタビューに応じた頃からでした。それ以来、「観光は地域の活性化の重要な柱になる」と考え、30年近くにわたって観光に人一倍の関心を持って取り組んでまいりました。観光基本法の全部を改正して2006年12月13日に観光立国推進基本法が成立し、2008年10月1日には観光庁を発足させることができました。それから15年がたちました。思えば長い道のりでしたが、「観光立国」の重要性が多くの人に理解されるようになり、感慨深いものがあります。
観光立国の意義は多々ありますが、観光は、人口が減少し、少子高齢化が進むわが国において、消費の増加、雇用の創出など地域における幅広い経済効果を生み、地域の方々が誇りと愛着を持つことができる活力に満ちた地域社会の実現に大きく寄与することになります。また、観光は文化であり、観光産業は平和産業であると常々申し上げております。国際観光は、さまざまな国・地域と双方向の交流を積み重ね、ノコギリを引くように、行ったり来たりの繰り返しが大切です。市民同士の観光交流は、諸外国との相互理解の促進、国際的な平和への貢献につながります。観光立国の実現は、わが国経済社会の発展のために不可欠な重要な課題です。
観光庁の発足以来、観光関係の皆さまのご尽力により、国内観光、国際観光の振興に成果が上がり、観光立国実現への歩みが一歩一歩進められてまいりました。しかしながら、観光産業は、約3年にわたって新型コロナウイルス感染症に苦しめられました。Ｇｏ Ｔｏトラベル事業、全国旅行支援、水際対策の大幅緩和などを経まして、国内外の旅行需要はようやく回復しつつあります。長く続いたコロナ禍で観光事業者の経営状態は予断を許さない状況が続いておりますが、観光地はかつてのにぎわいを取り戻し始め、活力あふれる姿へ回帰する光明が差してまいりました。
わが国は観光立国への道を再び歩み始めています。日本各地の素晴らしい自然、文化、食、産業など、地域資源を磨き上げ、その魅力を発信することで、世界の中で日本の存在感が増し、多くの人の交流が生まれるよう取り組んでいく必要があります。これからの時代にわが国が世界で大きな存在感をもって生きていくためには、観光の力が欠かせず、観光庁の今後の取り組みに期待しています。同時に、観光関係の皆さまも観光庁をどう活用していくかを考えてほしいと願っています。
観光は、魅力あるまちづくりに取り組む地域の方々や、宿泊業、旅行業、交通運輸業、飲食業などを営むさまざまな民間の事業者が主役です。観光庁には、そうした多くの関係者を先導し、利害が交錯するときには調整役を担い、また、成功した地域や事業者のノウハウなどを全国に広めて底上げを図るなど、観光立国の実現に向けて「けん引役」「調整役」「縁の下の力持ち」としての役割が期待されます。関係省庁、自治体なども含めて幅広い関係者の連携を図り、総力を結集し、これからも観光立国の実現に取り組んでほしいと考えています。
観光が明るくなれば、世の中は必ず明るくなります。今こそ観光に関わる行政と産業が一体となって、これまで培ってきた長年の経験と英知を結集して力を発揮し、全国各地の元気を取り戻し、わが国の観光産業がさらなる飛躍を遂げるよう、観光立国の実現に総力を挙げて共に奮起してまいりましょう。
観光庁15周年を機に、さらなる観光立国の推進を期待するとともに、私自身も精一杯励んでいく所存であります。最後になりましたが、観光関係の皆さまのますますのご健勝を祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。
