【焦点課題】Loco Partners 代表取締役副社長 塩川一樹氏に聞く


塩川氏

第二創業期、理念刷新の狙い

Relux起点に出会いを形に OTA業界で独自路線の追及へ

 ――Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)を刷新したが、背景は。

 「創業以来、『つながりをふやす』というミッションのもと、宿泊予約サービス『Relux』を通して、地域と旅行者、宿との良質な“つながり”をつくることを使命として活動してきた。今年、コロナ禍という特殊環境の中で創業10年目の節目を迎えた。さらに昨年4月には経営陣を刷新するなど、変化の中で今後われわれがどう社会貢献すべきかを考える転換点となった。これまで『アジアを代表する旅行カンパニー』をビジョンに掲げていたが、訪日事業の一定期間の撤退をはじめ、旅行代理店の枠組みを超えた事業展開や価値提供を考えた場合、旧ビジョンをアジャストする必要性を感じた。またビジョンだけでなく、改めて会社の存在意義を再定義した。社員全員と語り合いながら、お客さまと宿が出会い生まれた体験、新たな縁などを言語化し、自分ごとで語れるミッション、ビジョンを作り上げた」

 ――ミッション「日本に驚きなおそう。」について伺いたい。

 「目指すのは、日本の各地に存在する魅力が最大化され、その価値と人々がつながり合う社会だ。捉え方はさまざまだが、身近な人、宿、地域との関係性の中に、多くの喜びが詰まっている。自分たちが当たり前だと思うことが、別の人に伝わった時に驚きや発見が生まれる。当たり前にある尊さを見落とさず、光を当ててリスペクトできる謙虚な自分たちでありたいという願いも込めている。宿、地域の魅力を紹介し、体験や発見を生み出すことは、驚きとともに喜びの好循環を生むことにつながるはずである」

 ――ビジョン「人と地域を深くつなげるプラットフォーム。」について。

 「ミッション実現のため、人と地域のつながりを生み出し、育むための入り口と発信地でありたいと考えている。また、滞在することで価値を感じられるなど、観光のステージが上がる中、宿の皆さまが誇りを持ち取り組んできたことに対してわれわれがリスペクトしていることを伝えたかった。今後は、Reluxを起点に領域に捉われないサービスの提供ができる存在になるよう歩みを続け、出会いを形にするなど期待に応えていく」

 ――ミッション、ビジョンに基づいた今後の事業展開は。

 「従来の『アジア』という地域規模感や、『旅行代理店』という事業領域の縛りをなくしたことが大きな変化としてある。宿泊予約サイトが数多くある中、時間コストを下げ時間価値を高めることの重要性が高まっている。Reluxの特徴である『厳選』を活かし、提供する宿の魅力を深掘りしながら価値ある予約を創出していく。それを実現するには旅行だけにこだわる必要はないと考えている。当社は宿の価値を提供する介在者として、お客さまの時間を豊かにする宿泊だけにこだわらないシナジーある事業展開を検討していく」

 ――会社の規模はどこまで伸ばすのか。

 「企業規模は、中期で5倍を目指す。今は達成に向け、足りていない機能、パーツを1個1個埋め合わせている」

 ――業界での立ち位置はどこに置くのか。

 「マーケティング用語でいうと、業界の上にリーダーがあり、フォロワー、チャレンジャー、ニッチャーがある。われわれは、ニッチャーとして、独自の戦場で事業を伸ばしていく」

 ――社内での変革について。

 「人事制度、CS領域、システム開発の三つに大きく投資している。社員には長く働きたい環境、お客さまには新たに立ち上げたコールセンターでいつでもつながり、不安を解決する環境を提供していきたい。システム開発では大手OTAにはまねできないサービス、機能を機動的に拡張、改善していく。全てが整うと見える景色は変わるだろう」

 ――親会社であるKDDIとの関係性は。

 「生活に身近なスマートフォンの利用で人生を豊かにすることを目指して、ライフデザイン領域を拡大しており、旅行は重要なセクターである。VR、XRなど移動を伴わない最先端のテクノロジーを使うサービスもあるが、われわれは移動を伴う領域のプラットフォームの中で、旅マエ、旅アトにもテクノロジーを活用し、旅行サービスへの満足度をさらに上げていく」

 ――コロナ禍での業界の現状はどう捉えているか。

 「業界全体で言えば8割以上はピンチの状況にある。だが、この状況を乗り切った先にチャンスがあるはずだ。需要回復期に向け、情報、コンテンツを多数ストックすることで、回復期の需要の受け皿を準備しておきたい。われわれはソムリエのように宿を理解し、価値ある予約を作り、経営を助けたい。観光からでしか解決できない社会課題はたくさんある。共に挑んでいきたい」

 

しおかわ・かずき=立命館大卒。JTBを経て、リクルート旅行事業部で首都圏・伊豆・信州エリア責任者、トラベルズージャパンでエンターテインメント企業、ホテル・旅館の営業責任者として従事。2012年7月にLoco Partnersに取締役として参画し、20年4月から現職。
【聞き手・長木利通】

 
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