【焦点課題】Aカード 代表取締役  内藤信也 氏に聞く


Aカードの強みと事業展開

加盟数増で大きな送客を実現 独立系ホテルのインフラに

 Aカードホテルシステムの内藤信也代表取締役に、Aカードの概要紹介や利用特典、会員施設の現状などを聞いた。

 ――事業概要の紹介を。

 「ユーザー目線では出張ビジネスパーソンをメインターゲットにしたキャッシュバックのポイントカードで、加盟ホテル目線では独立系ホテルのためのポイントカード。特典としてキャッシュバックにこだわる。1泊1万円の宿泊券と現金1万円の価値は同じでないと考える。1万円の宿泊券を使ってよほど希望に沿ったホテルに泊まらない限りは、現金1万円の方に価値がある。当社が対象とする独立系のホテルは施設のスペックに差があるので、キャッシュバックならサービスとして均質性を保てる」

 「10%という還元率の高さも好評を得ている。実費精算を採用する企業が増加した背景もあり、各企業で規定されている宿泊費用の上限いっぱいの良い施設に泊まればポイントがたまりやすい。一方で、定額精算でもポイントをためたい利用者は一定数存在する。いずれの精算方式でも集客を見込めるのが強みだ」

 ――現在の会員数は。

 「9月14日現在で、ホテルは479施設、4万9300室。加盟数が増えるほど大手ホテルチェーンに並ぶほどの送客が可能になる。一般会員は112万人。年会費、入会費が無料で、キャッシュバックに魅力を感じて加入する人が多い」

 ――コロナ禍で会員の独立系ホテルの現状は。

 「施設のタイプがビジネス型か観光型か、メイン宿泊者が国内客や外国人客かで4通りの象限を想定すると、国内のビジネスパーソン向けのホテルが健闘している。特に、ブルーカラーや技術者系の方がよく泊まる施設は好調だ。一方で、ホワイトカラーの出張が減り、インバウンド需要にかじを切っていたビジネスホテルは厳しい。Go Toトラベルキャンペーンの恩恵を受けている観光型の高級な旅館、フルサービスホテルは、もともと国内の巣ごもり需要を取り込んでいた上に、Go Toで新規の宿泊客も増えたので稼働率が高いと聞く。インバウンド向けのホテルは、ビジネス型、観光型ともに厳しい」

 「国内旅行消費額のうち、インバウンドの割合は約2割。2割の客層に向けて100%で動いてしまったインバウンド主体の施設は、そのツケが出てしまった。仮にインバウンド比率がさらに上昇したときに、今回のように外国人が来日しなくなることが数年に1回発生すると打撃はもっと大きくなる。先の4象限を細分化し、顧客のポートフォリオの性質を地域やハード、ソフトに合わせてきめ細かく調整する必要がある」

 ――会員への支援は。

 「情報提供を意識して行っている。各施設間で情報格差があるので、国や自治体の支援制度の説明、他の施設での実践的な感染防止策、資金繰りに関する情報などを分かりやすい形に整理して伝えている」

 ――加盟ホテルの経営者や支配人が出席するトップ会は。

 「来年は中止。毎年トップ会で配布しているアンケートは引き続き集計し、コロナ禍での宿泊者の傾向や実態を深追いして会員施設に提供したい」

 ――会員獲得の戦略は。

 「技術者系の方を含むエッセンシャルワーカーの獲得を真剣に考えなければならない。カードレス化も進めたい。さらにスマホのアプリを利用して、宿泊客の動向を動的に捉えたマーケティングをより細かく行い、何が起こっても減らない客層を探っていきたい」

 ――システムの拡充は。

 「ポイント利用時に入力できるパターンを増やし、会員から好評を得た。現場レベルでも多様なプランにしっかり対応できている」

 ――一般会員獲得のために行っていることは。

 「Aカードのホームページで申し込めば500ポイントが付く。今後、コロナに負けるなキャンペーンのようなものの実施を検討している」

 ――今後に向けて。

 「出張ビジネスパーソンの利便性向上のために、システム改良や開発などを行う。出張ビジネスパーソンと親和性の高い提携パートナーを増やしたい。一方で、加盟している独立系ホテルに対し、経営の承継、従業員の教育、共同購買などの経費面の事案、福利厚生などに関していろいろ提供できるよう努める。Aカードが独立系ホテルのインフラとなるよう、他の大手ホテルチェーンとは違った角度で取り組みたい」

 ――観光業界にメッセージを。

 「最悪の事態を意識して備えておくことが重要。本当の経済危機はコロナ終息後に訪れると想定しておいた方が、生き残る可能性は高まる」

 

 内藤 信也氏(ないとう・しんや)コーネル大学・経営大学院卒。2008年ホスピタリティパートナーズ入社。同3月からAカードホテルシステムの執行役員を兼任。19年3月から現職。

【聞き手=西巻憲司】

 
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