【焦点課題】日本観光振興協会 理事長 久保田 穣 氏に聞く


久保田理事長

日本観光振興協会のかじ取り

「観光品質」の追求を Go To は一石二鳥

 ――副理事長からの昇格です。

 「コロナ禍で観光業界が大変な時にある中での大役就任で、身の引き締まる思いだ。副理事長を経験し実務経験はあるが、理事長職はまた別の役割も求められる。これまで、JR東日本、JTB、日観振を通じて観光に接する機会をいただいた。これからは恩返しの気持ちで、皆さんのサポートを得ながら仕事を進めていきたい」

 「当協会はツーリズム産業団体連合会と合体し、2011年4月に誕生、今年で10年目を迎える。そこで10年目のメッセ―ジを発信。理念として『観光の光で輝く持続可能な社会を実現します』を掲げ、『光をつなげる(ネットワーク)』『光をつくる(価値創造)』『光をはぐくむ(持続的成長)』の三つの協会の役割、そして職員がとるべき行動を示した『行動指針』も設定した」

 ――コロナ禍は働き方の変更を迫り、日観振も在宅勤務など業務体制を変えましたね。

 「フェイス・トゥ・フェイスでないまどろっこしさがあったが、テレワークやウェブ会議の何たるかが分かったし、メリットもあった。6月19日に『withコロナを生き抜く地域と観光産業に向けて』と題する緊急のウェブシンポジウムを開いたが、650人を超える参加者があり、手ごたえを感じた。テーマが時宜を得たこともあるが、全国をカバーできることが分かったことは収穫だ。こうしたスタイルの会議は今後増やしていき、ゆくゆくは会議の国際化も考えたい」

 ――これからの時代、「withコロナ」と言われています。

 「旅行・観光は安全・安心じゃないとだめ。不安、危険なところに旅行者は足を運ばない。宿泊施設など多くの業種で感染拡大防止のためのガイドラインを作り、対応しようとしている。その上で『観光の品質』を追求してほしい。品質にもいろいろあるが、まず、『安全・安心』を基盤に、地域における魅力の磨き上げ、宿で旅行者を癒やす、楽しくさせる、おいしいものを提供する、分かりやすい移動手段の提供なども品質。そうした品質を上げることが観光事業者の基本であり、ひいては地域の競争力強化につながる」

 ――観光業界が期待するGo Toトラベルキャンペーンですが、終息していない中での実施に批判も出ました。

 「観光は人間の根源的欲求に基づく行為だ。不急はともかく、決して不要ではない。地域活性に役立ち、経済的な効果もある。ストレスを解消、好奇心を満足させ、人と人との触れ合いを生む旅を半額で提供するキャンペーンは、旅行に出やすい機会を提供すると共に、需要をつくり事業者も救う。まさに一石二鳥だ。特に旅行会社は、DMOがつくるコンテンツなどと連携して、国内観光の魅力を再認識させるような企画力を発揮して、このキャンペーンを有意義なものにしていただきたい」

 ――20年度の重点事業は何でしょう。

 「近年、自然災害による観光被害も大きくなっており、危機管理に対する意識、およびBCP(事業継続計画)の策定が急務となっている。そこで、日本商工会議所と共に『観光危機管理・事業継続力強化研究会』を6月末に立ち上げた。早急に内容を検討し、実施にもっていきたい」

 「DMOについては広域、地域で独自の取り組みを行っているが、相互の情報交換を図り、DMO全体が発展していく方策を探るべきではないか。共通のプラットフォーム(PF)を作るなど、ネットワークの強化に努めたい。例えば、観光地を利用してのテレワークやワーケーションの議論もあるが、企業側も推奨しないと拡大しないので、地域のDMOと企業をつなぎ、ケースを増やすなどしていきたい。まずは『旅の安全・安心』について取り組み、事例の共有化を図っていく予定だ」

 「ツーリズムEXPOジャパンは予定通り、10月29日~11月1日に沖縄で開催予定だが、名称を『リゾート展in沖縄』から『旅の祭典in沖縄』に変更した。イベントのみならず、あらゆる地域の観光産業復活の機会にしたいという考えからだ」

 ――話は変わりますが、趣味は何でしょう。

 「オペラ鑑賞。世界のオペラハウスに行き、生で見ること。昨年はニューヨークのメトロポリタンオペラやザルツブルクの音楽祭なども行った。コロナ禍で海外に行けないのが残念だ。日本のオペラのレベルも高くなっているが、華やかな本場の雰囲気にはまだ達していない。好きな歌手はロシア出身のアンナ・ネトレプコだ」

 ――最後に業界に向けメッセージを。

 「観光の本質は人間の根源の欲求に基づく『移動』と『交流』だ。必ず戻り、さらに拡大していく。今は厳しい状況にあるが、業界人は意気消沈しないでほしい。プライドを持って、明日に向けて頑張りましょう」

【聞き手・内井高弘】

久保田理事長
 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒