残念なことに、素敵な茶碗のお茶からは、喉から鼻に抜けるような香りもうま味もまったく感じることができません。湯の温度は上級煎茶向けでしたが、茶の葉の量に対する湯の量が多過ぎる味です。ポットの中味はどういう状態なのだろうとの疑問が膨らみます。本を読みながら、次のサービスを待ちました。
すると、私が飲み切った頃合いを見定め、注ぎに来て下さいました。ポットの中がどうなっているのかぜひとも知りたく、「お手数ですが、ふたを取って、中を見せていただけますか」と、先方にしてみれば、思いもかけない依頼に、「少し渋くなってるかもしれませんが」と、少し驚きながらも嫌な顔もせず、見せて下さいました。たっぷり残った湯の中に柔らかそうなお茶の葉が浮いていました。推測するに6グラム前後の葉の量でしょうか。このポットの湯量では、味が薄すぎるのも当然です。茶の葉を浸したままなのも不思議です。湯温が熱くないので、渋味は特に感じませんが、味もほとんどありません。これが日本のお茶の味だと思われるのはあまりにも悲しいと思いつつ、3回目のサービスを待ち、本に目を落としました。
席はかなり埋まっていましたが、目配りは行き届いていて、タイミングよく茶碗にお茶が注がれます。保温器のおかげ(?)で温かいだけの色つきのお湯を飲み干し、高いお茶代を支払い、失望のうちにラウンジを後にしました。
ゆったりと流れる時間と素敵な空間を提供するのが第一の目的なのでしょうが、そこにお茶のおいしさが加わったらどんなに素晴らしいことでしょう。お茶の納入業者の方はあの淹(い)れ方を承知なさっているのかしらとも思いました。香りもうま味もない薄いあの味が日本茶だと、外国から訪れた方々に思われるとしたら、とても、とても残念です。