お茶のうま味は、アミノ酸の一種であるテアニンという成分によるものです。お茶には全部で20種類くらいのアミノ酸が含まれ、うま味の基となっていますが、その約半分を占めているのがテアニンです。お茶を飲んだとき、まろやかさが口中に広がる経験がおありの方も多いと思います。店頭で子供相手にお茶を淹(い)れるとき、「お口の中が、まぁーるくなった感じがしない? それがお茶のおいしさよ」と伝えると、大抵の子たちがうなずいてくれます。
このうま味成分であるテアニンは低い湯温でも十分に出ますし、多少時間はかかりますが、水でも出ます。テアニンによって、おいしさを感じるだけでなく、脳からα波が出て、リラックス効果をもたらすことは、数々の研究結果からすでに明らかにされています。しかも脳を活性化させるという相反するような作用も認められているのです。さらに、カフェインの副作用を穏やかにする働きを持つことも証明されています。なんという優れもの! カフェインが多く含まれる上級のお茶にはテアニンの含有量も多いのです。自然の采配の妙とは言い過ぎでしょうか。
「お茶は淹れるたびに味が違う。むずかしい」との声もよく聞きます。
「確かにそうですね。でも、それが面白いとお思いになりませんか」と応じ、お茶の淹れ方の基本をお伝えしています。「お茶をおいしく淹れるには、次の点に気を配って下さい。『お茶の葉の量、お湯の温度と量、浸しておく時間』です。この四つの変数の掛け算の結果がお茶の味ですから、毎回違って当然です。その違いを知って、お好みの味を見つけて下さい」と。
お茶の味は、香りももちろん影響しますが、テアニンのうま味、カフェインの苦味、カテキンの渋味の三つのバランスで決まります。
苦味成分のカフェインと渋味成分のカテキンはお湯の温度が高ければ高いほど多く抽出されます。熱い湯で淹れると苦く、渋いお茶になるのは当然のことです。
上質な煎茶の場合、1煎目は、70~80度のお湯を使い、1分ほどして淹れると、テアニンのまろやかさを十分に味わうことができます。湯温を下げるには、湯冷ましを使うと便利ですが、もっと簡単で合理的な方法があります。それは湯飲みにまず湯を入れ、それからその湯を急須に移すやり方です。こうすることで、湯飲み自体も温まり、適切な湯量も確保できます。