サービス業にたずさわっていると、自分がサービスを受ける側に立った時、相手を厳しい目で見てしまうことは否めません。ここはこうすべきでは、そこは違うでしょうなどと、どうしても思ってしまうことが多々あります。悲しいさがでしょうか。それとも自身の性格からなのかもしれませんが…。もちろん「さすが!」とうなるようなサービスに出合うこともあります。温かく、うれしい気持ちで満たされ、自身もかくありたいと、学ぶべき点を自店で生かせないかと考えを巡らせます。
サービスを上手に受けるには素直さと感謝の気持ちが大切なのではと、私共の店のお客さまの態度に教えられることもあります。ご本人は意識されてはいらっしゃらないのでしょうが、もっとして差し上げることはないかしらとの気持ちになるほどです。お買い上げの頻度や金額とはまた別のものです。
仕事に就いて40年以上たっても、人と人とのつながりは奥深いと、いまだに理解し切れていないと思うこの頃です。
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お茶の葉が最終の商品と捉える茶専門店に対し、若年層にとっては抽出液こそがお茶のイメージなのだそうです。
「自身で急須を使ってお茶を淹(い)れ、お茶のおいしさや香りの高さに触れる体験を提案し、気軽に茶専門店に足を向けてもらう」ことを目標として「お茶Bar」の試みが始まったのが平成22年。お茶業界の種まき名人、橋本久美子氏の発案です。コンビニエンスストアでカップラーメンを買うとお湯が使えることにヒントを得たそうで、保健所の許可も必要ありません。急須1回分の茶(小袋入り)を購入した方に、急須と湯、ふた付きカップを提供し、自ら淹れたお茶を、テイクアウトするというものです。
急須の使い方がぎこちない方が多いのですが、なんだか皆さん楽しそうなのです。非日常を楽しむという感じのノリです。簡単なコツやポイントをお伝えし、質問にも応じ、感想などお聞きします。「急須で淹れるとこんなにもおいしいんだ」と、笑顔で店を後にされる方がほとんどです。