話は少し横道にそれますが、「茶葉」の読み方についてお伝えしたいことがあります。日本茶関連のテレビ放送やコマーシャルなどで「ちゃば」という言葉を耳にすることが多いのですが、日本茶インストラクター協会では「茶葉」は「ちゃよう」と読み、「ちゃば」とは言わないように指導しています。お茶教室やインストラクションの際は「ちゃば」ではなく、「お茶」「お茶の葉」と表現するように勧めています。「ちゃば」という読み方は日本茶には適さないとのことからです。
1738年には、宇治茶の元祖とも称される永谷宗円が初めて蒸し製煎茶製法を生み出しました。現在につながる蒸し製のお茶の誕生でした。さらに、その100年後、玉露が製造されました(1835年頃)。それから約150年を経て、1985年に煎茶の缶入りドリンクが開発され、その5年後の1990年に、いよいよお茶のペットボトルが登場しました。
数年前のことですが、ある飲料メーカーの配送トラックの荷台に描かれた、大きいペットボトルのお茶の絵と、「これがお茶」とのキャッチコピーを見るたびに、「が」を「も」に書き換えたいと何度思ったことでしょう。
また、別のメーカーのペットボトル茶のコマーシャル動画で描かれていた、相手を思いやってお茶を勧める場面、ゆったりと流れる時間、ゆるりとお茶を楽しむ気分、まさにそれは「急須で淹(い)れるお茶の世界」そのものと感じたのは私だけでしょうか。お茶の持つ癒やしとくつろぎを見事に映し出してはいましたが…。
ファッションの世界でも、こだわりの服とファストファッションをTPOに応じて着分けるように、急須で淹れるお茶、ティーバッグ、ペットボトルのお茶とそれぞれの良さを認め、選択できる今は、ある意味豊かな時代なのかもしれません。
それにしても「日常茶飯」の「茶」が、茶葉で淹れるお茶のことだった時代は終わりを告げたのでしょうか。日常ではなく、非日常? 思えば遠くに来たもんだ…。いやいや、ここがお茶屋と日本茶インストラクターの踏ん張りどころ。奥深いお茶の魅力を伝えていかねば。