【日本旅行 23年度重点施策】日本旅行 代表取締役常務取締役ソリューション事業本部長 舘 真 氏 に聞く


日本旅行 代表取締役常務取締役ソリューション事業本部長 舘 真 氏

「社会課題解決事業」で地域に貢献

 ――昨年の振り返りから。

 舘 会社全体としては非常に良い業績で終えることができた。

 行動制限が課されなくなった3年目にして、教育旅行が堅調に戻り、海外を含めた企業案件も段階的復活をするなど、旅行そのものに関わる部分の回復も大きく寄与した。しかしながら特筆すべきはソリューション領域、中でもBPO(業務委託)系の仕事が業績をけん引した。利益の3分の2以上はこの分野で上げた1年だった。

 新たな中期経営計画により、昨年まず、ツーリズム事業本部から先行して事業ポートフォリオ経営に移行し、収支目標をエリアでの管理から本社での一括管理にした。ソリューション事業本部も同時にスタートできれば良かったのだが、コロナ禍への対応もあり、移行期間として昨年1年間を当てて今年の1月1日から新体制がスタートした。

 ソリューション事業を公務・地域ソリューション、教育ソリューション、コーポレートソリューション、ビジネストラベルソリューションという四つの柱、そしてインバウンドをプラスして五つの領域に分け、従来のエリアごとではなく、それぞれ縦割りの事業領域ごとに収支管理をする。

 ソリューション事業の中で、どの部分の採算性が良く、どの部分が悪いかを考え、採算性の良いところに人を含めた経営資源を投入する。

 ただ、お客さまの志向として、教育だけとか、ビジネストラベルだけとか、一つの領域にとどまる仕事は少ない。組織は縦割りにしたものの、五つの領域がどう連携を取り、一つ一つの案件に関わるかが重要になる。そのため五つの領域の横連携、ひいてはツーリズム事業本部との連携を進めるとともに、事業共創推進本部、DX推進本部、JR横断ソリューション本部といった組織横断的取り組みを先導するセクションにもしっかりと経営資源を配分する。

 ――今年は。

 舘 昨年はBPO、特にワクチン接種会場の運営に代表されるようなコロナ禍における特殊要因的な分野での業績が非常に大きかった。ただ、そのような案件については徐々に減少していくことが必至だ。復活する旅行に関わる分野に戦力をしっかり充てることが重要になる。

 ソリューション事業の目標数値としては、昨年実績並みに設定しているが、今、指摘したように構成は大きく変わってくるだろう。旅行の中でも、とりわけ団体の取り扱いが増えるのは間違いない。団体旅行の提案として、企業ではCSR(企業の社会的責任)から発展したSDGs(持続可能な開発目標)、教育事業では学習機会としてのSDGsが大きなテーマになろう。従来の観光型から顧客のニーズを踏まえて転換を図っていかねばならない。

 ――いわゆる非旅行業分野の取り組みを進めるに当たり、御社としての強みは。

 舘 私は非旅行業ではなく、社会課題解決型事業と認識している。その上で言うと、先ほど申し上げたように、組織自体は縦割りにしているものの、それぞれが完全に独立しているわけではなく、本社の中に一体となって存在しており、一つの取り組みを進めるに当たり複数の部署が連携し、一体となって行動できる。これが当社としての強みと認識している。

 他の業種との比較で言うと、われわれは旅行をコーディネートするに当たり、サプライヤーを含めて多くの事業パートナーや全国規模のネットワークを持つ。これが大きな強みだ。

 コロナ禍の3年間で、社会への貢献という意味で、われわれ旅行会社のプレゼンスは大きく上がったと思う。それをわざわざ元に戻す必要はない。従来の旅行業を行いつつ、社会的に価値のある、直接旅行に関係しない領域の仕事も積極的に行い、地域の課題解決に貢献する。

 ――観光業界はコロナでだいぶ人が離れた。御社の要員について。

 舘 コロナ禍に突入してからの離職率は確かに高い。当然、人員を増やしていかねばならないが、やみくもに増やすのではなく、どこにどれだけ配置するか、慎重に判断する。新卒採用と中途採用も積極的に行うが、大事なことはこの仕事にやりがいや誇りを持てるような環境を早期に整備していくことだ。

 ――旅連に資する取り組みは。

 舘 およそ2年半、旅行の分野で会員の皆さまへの貢献がほとんどできなかった。今後、旅行需要の本格回復を見据え、皆さまの協力も得ながら誘客のためのさまざまなキャンペーンを行いたい。

 ただ、それだけでよいのかという疑問がある。われわれが目指す地域の課題解決については、目標とするところは一致していると思うし、その問題について共に取り組んでいただける存在だと認識している。会員の皆さまは地域の名士であり、行政との強いつながりを持っている。われわれはそれを活用させていただき、全国地域で得た知見を用い、地域社会に還元するさまざまな課題解決に取り組みたい。

単にお客さまを送るという関係から、共に地域の課題解決に取り組み、地域の魅力づくりによって誘客を推進するという関係、今までとは一歩進んだ向き合い方をさせていただきたい。

 ――日旅連会員に向けて、さらなる要望、メッセージなど。

 舘 コロナ禍を経て、日本旅行は組織が大きく変わった。旅連の皆さまとの関係も新たなステージへと発展していかなければならないと思っている。共に新しい時代を築いていきましょう。

 

日本旅行 代表取締役常務取締役ソリューション事業本部長 舘 真 氏

 

 
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