【日本旅行 23年度重点施策】日本旅行 常務取締役ツーリズム事業本部長 岡本 隆 氏 に聞く


日本旅行 常務取締役ツーリズム事業本部長 岡本 隆 氏

着地目線の「誘客営業」さらに進める

 ――昨年の国内旅行市場と御社の業績について。

 岡本 年初はまん延防止等重点措置の影響が大きく、国内旅行商品「赤い風船」の1~3月期の販売額はコロナ禍前(2019年)の4割弱にとどまった。ただ、ゴールデンウイーク後は特別な行動制限がなくなり、4~6月期は同5割、7~9月期は同6割と徐々に回復した。そして全国旅行支援の追い風で需要が本格的な回復基調に入り、10~12月期はコロナ禍前の水準を超えた。

 方面別では年間を通じてマイクロツーリズムの傾向が継続した。首都圏から東北、信越、関東、京阪神から関西、中四国といった方面が堅調。北陸は全般的に好調だった。ロングの北海道、沖縄は送客人数では年間を通じて苦戦が続いた。

 販売チャネルとしてはウェブのシェアが拡大し、19年のリアル7割、ウェブ3割から逆転した。この傾向はさらに進むと思われる。

 ――昨年、ツーリズム事業本部がソリューション事業本部に先駆けて「事業ポートフォリオ経営」に移行した。初年度の手応えは。

 岡本 店舗の縮小、ウェブ販売の拡大といった効率的な業務運営への移行により、事業収支は大幅に改善した。また、支店の運営を地域の営業本部ではなく本社直轄で管理することにより支店と本社のコミュニケーションが活性化し、リアルタイムでの各地の状況把握や迅速な意思決定が組織的に行えるようになった。
部門の枠を超えた業務の相互連携も進んだ。従来は企画と仕入、販売の各部門で統括する部署が分かれており、それぞれが関与することは少なかったのだが、今回の組織改正でこれらを地域ごとに一体化させ、連携が容易にできるようになった。一例は全国旅行支援での初期対応。かなりのマンパワーを要したのだが、新体制により直接の担当箇所である販売部門だけで対応するのではなく、ほかの部門の社員もスムーズにその業務に協力できた。

 企画、仕入、販売の地域ごとの統合で社員のマルチタスク化も狙っていたが、その点は道半ばだ。

 ――今年の国内旅行市場について。

 岡本 当面は全国旅行支援で需要の押し上げが期待できる。最近は割引の有無に関わらず旅行に行きたいという人も増えている。支援制度がなくなると反動で需要が落ち込むという心配の声もあるが、マインドが相当上向いているので、多少の落ち込みはあっても、今までとは違う動きになるだろう。

 インバウンドについては、コロナ前のレベルに戻るかは中国本土のマーケット次第だが、かなり活況を呈してきた。ありきたりではない行き先や特別な体験を求める人も増えているようだ。アウトバウンドは本格回復までにしばらく時間を要すると考えられるため、海外旅行の代替需要を含めて高品質でラグジュアリーな国内旅行素材へのニーズが継続するだろう。

 コロナ禍の中、パーソナルスペースの確保など安心・安全の提供、そしてその「見える化」が旅行商品でも必要になろう。当社が力を入れるSDGsについては既にJRセット商品でカーボンオフセットプランを販売しているが、お客さまの反応は上々であり、社会的に意味があるものへのコスト負担についての理解が高まっていると思われる。着地型コンテンツなど、旅ナカでの楽しみ方を重視して方面や商品を選択する志向もさらに高まるだろう。

 JRグループと自治体が共同で実施するデスティネーションキャンペーンなど、旅行意欲を刺激するきっかけをうまく取り込みながら、地元の観光事業者等と一体となったプロモーションを展開したい。

 ――今年の販売目標は。

 岡本 赤い風船はコロナ禍前の19年比で7割程度の回復を見込む。ウェブを基軸としたJRセットプランを中心に、販売にさらに力を入れる。旅連とも関係するが、各地の魅力ある素材をいかに把握して、顧客のニーズとマッチングさせるか。今までの発地目線から転換して、着地目線の「誘客営業」をさらに進めたい。SDGsをテーマとした商品造成も日旅連との連携でチャレンジを続ける。

 ――日旅連会員へのメッセージを。

 岡本 コロナ禍で厳しい経営を余儀なくされてきたが、ようやく長いトンネルの出口が見えてきた。観光業界に限らず、コロナ前と同じような営業スタイルは成立しないが、旅館・ホテルや観光施設の皆さまもアフターコロナを見据えた新たなビジネスモデルを模索されていると思う。

 当社においてもコロナ禍の中での生き残りを懸けて、グループの総力を挙げてソリューション事業を拡大してきたが、自治体や地域の皆さまと向き合う中で、ツーリズム事業の役割や機能について再認識している。各事業がしっかり連携した中で地域の課題解決にも貢献できる新しい価値を創造していきたい。

 これからが観光業界の存在意義を世の中に再評価してもらうための正念場。リアル開催のイベントや対面で話ができる機会も増えてきた。これまで以上に日旅連の皆さまとの対話を充実させ、連携を深めながら業界全体の復興と成長を目指していきたい。

 

日本旅行 常務取締役ツーリズム事業本部長 岡本 隆 氏

 
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