【日本旅行 23年度重点施策】日本旅行 執行役員ソリューション事業本部首都圏広域営業部訪日旅行営業部長 緒方葉子 氏 に聞く


日本旅行 執行役員ソリューション事業本部首都圏広域営業部訪日旅行営業部長 緒方葉子 氏

方面と時期の分散が大きなテーマ

 ――昨年の振り返りを。

 緒方 5月に行われた観光庁の訪日実証ツアーで、ようやく国境が開くのだと実感した。6月からは団体限定など条件付きで観光目的の訪日が解禁されたが、本格的な回復はやはり10月11日のビザなし渡航の解禁。そこから訪日が一気に増えた。個人客、団体客ともにこの日がターニングポイントだった。方面別では中国以外、従来の取引先からのお客さまが一気に来ている状況。台湾からが若干遅れたが、欧米豪は一気に来た。

 ――円安も影響を与えているようだ。

 緒方 よくいわれるが、ロングホールになると飛行機代がそもそも高い上に、オイルサーチャージがかなりかかる。円安で滞在費が2割3割安くなっても、そこで帳消しになってしまったという話がある。

 待ちに待っていたところにようやく国境が開いた、というお客さまの心理によるところが大きいのではないか。既にさまざまな国が国境を開け、キャンペーンを行っていた。「次は日本だ」という中で、「いよいよ本丸が開いた」と、かなりの盛り上がりだったと当社と取引のあるエージェントが言っていた。

 ――さまざまな調査で日本が行きたい国ナンバーワンに選ばれていた。

 緒方 コロナ禍でせき止められていたものが一気に動きだしたようなイメージだ。

 ――昨年の会社の取り組みについて。

 緒方 インバウンドのお客さまをさまざまな場所、できるだけ地方にお連れしようと取り組んだ。

 地方には地元の方もまだ気付いていない宝、観光素材がたくさんある。それを地元の方々と発掘し、海外のエージェントに紹介し、送客に結び付ける。これはコロナ禍でも一貫して取り組んできたことだ。

 ――昨年5月の観光庁の訪日実証ツアーは御社が第1陣を受け入れた。

 緒方 それまでは駐在員の帰国のお手伝いや留学生の団体などを細々とやらせていただいていたから、観光目的で来られることが大きなインパクトで、涙が出たという社員もいた。第1陣ということで多くのマスコミが取材し、広報も忙しかったようだ(笑い)。

 ――今年1年の展望、課題は。

 緒方 宿泊施設、運輸機関など、観光業界全体が人手不足だ。当社も例外ではない。受け入れ態勢を整えなければならない。受け入れのシステムを効率よく、エラーがないように、というのがミッションだ。

 ――最近の市場環境、顧客の志向は。

 緒方 日本への募集型旅行は人気で、催行率が高い。バスをもう1台増やせないか、客室を増やせないかといったリクエストが多い。

 方面や時期については、こちらから誘導するところもあるのだが、今までとは違う場所を見てみたいとか、違う季節に行ってみたいという要望も多い。

 日本でもオーバーツーリズムの問題があった。抜本的な解決はなされていないようで、また再燃するのではと懸念している。時期も含めてどう分散させるかは私どもの会社だけの話ではないが、大きなテーマだ。

 時期の分散には、一つは「食」。食は四季ごとに旬がある。オフシーズンといわれる時期に、その時期にしか食べられないものをアピールするのも手だ。

 場所の分散には、「地域に負荷を掛けない」という意識を顧客に浸透させることだ。フランス人のスタッフから、現地ではそのような意識がお客さまの間でかなり浸透していると聞いた。

 ――会社はSDGsに注力している。

 緒方 観光庁の実証ツアーでは、参加者にペットボトルの代わりにマイボトルを配布した。旅館・ホテルの食事会場で朝の出発時に水をくんでいただいた。

 昨年、ロンドンへ出張した際、空港列車の到着駅でマイボトル用の水の自動販売機のようなものを見た。供給口が二つあって、一つが無料。もう一つが有料で、冷たく冷やした水だった。そこでお客さんが水をくむ。機械には「有料販売の利益の1割は海洋ごみの削減に使われます」と書いてあった。小さなことかもしれないが、日本も見習うべきだと思った。

 当社は国内旅行商品でカーボンオフセットプランを販売しているが、これを訪日のツアーで取り入れたいと考えている。

 ――インバウンドのお客さんに選ばれるために、地域や施設へのアドバイスがあれば。

 緒方 海外のエージェントに聞いたところ、日本の観光地は往々にして由緒ある寺社仏閣があったり、お茶やお酒がおいしいなどどこも似ていると言われたことがある。もっとユニークで、ここだけしかないものを探して、地域の一押しとしてアピールすればよいのではないかとアドバイスを受けた。また施設の方からよく、言葉が不安と聞くが、ありのままの対応でも良いと思う。流ちょうな言葉よりもおもてなしの態度や雰囲気。地域らしさ、日本らしさを出すことが重要で、ここはお客さまに喜ばれる要素にもなる。

 ――日旅連会員へ。

 緒方 ようやく訪日が動きだした。「Redballon」も年明け以降19年比で倍増している。
日旅連には訪日の委員会があり、当社と連携した取り組みをこれまで進めてきた。引き続き会員の皆さまの協力を仰ぎながら、本格回復に向けて共に歩ませていただきたい。

 

日本旅行 執行役員ソリューション事業本部首都圏広域営業部訪日旅行営業部長 緒方葉子 氏

 
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