【日本政府観光局インバウンド最新リポート 94】高付加価値旅行の誘致へ JNTOシンガポール事務所 鈴森佳奈子 上席次長


旅行会社招聘事業

シンガポール市場

 JNTOはコロナ後のインバウンド再開を見据えた施策の一つとして、旅行消費額増に資する高付加価値旅行の推進に重点的に取り組むことになった。観光庁定義による日本での高付加価値旅行者とは、1人当たり着地消費額100万円以上の旅行者を指す。

 シンガポールの2020年国勢調査によれば、世帯月収(勤労収入)9千シンガポールドル(約88万9千円、1月25日時点の為替レート)以上の割合は全体の約44%とされることからも、シンガポールには高付加価値旅行者となり得る層が多くいると考えられる。こうした層をターゲットに今年度当所が行った取り組みを二つご紹介したい。

 まず、ターゲット層に日本旅行を想起してもらうためのイベント開催である。われわれが有するネットワークには多くの日本好きの方がいるが、いわゆる富裕層と呼ばれる方々への直接的なアプローチは難しい。そこで、富裕層向けの旅行会社と連携しながら、その旅行会社の常客や、旅行会社とつながりのある当地の大手銀行にも協力を仰ぎ一定の基準を満たす銀行顧客に声掛けを行った。

 顧客取り扱い等の関係から、連携先に一任しなければならない内容もあったり、大衆向けイベントを基準にした予算では連携先の要望に応えられない等の課題も見えたが、結果的には参加者の大多数から、イベント参加後、日本に旅行したくなったとの回答を得ることができた。

 なお、その際の参加者アンケートでは、日本滞在期間を1~2週間と回答した方が約半数、2週間以上と回答した方が2割以上を占め、1回の日本旅行での着地消費額については半数が1万シンガポールドル(約98万8千円)以上と回答した。19年訪日外国人消費動向調査におけるシンガポール国籍者の平均泊数は7・5泊、1人当たり旅行消費単価は約16万円であることから、一般的な旅行者より長く滞在し多く消費する傾向にあると推測される。日本旅行手配方法については、意外にも半数以上が自己手配と答えた。

 二つ目の取り組みとして、富裕層向け旅行手配を担う旅行会社招請事業を紹介したい。昨年11月に東京都、石川県、富山県、長野県に約1週間招請し、新しい観光地や富裕層向け施設等を中心に視察した。受け入れにご協力いただいた皆さまには改めて感謝申し上げたい。

 参加者の反応の傾向としては、自分だけに用意された1対1での説明や体験、古い施設より新しい施設を好み、芸妓さんとの夕食、朝市や蒸留所見学等、食と体験が合わさったようなコンテンツへの評価が高い傾向にあった。自然を楽しむ内容も好評だった。今後の訪問先として都市部以外への希望も寄せられたが、日本側からは、受け入れたいがハード・ソフト両面での体制が追いついていないという声も聞かれた。

 今回の事例は一例であり、新しい気づきや改善点も多いところであるが、高付加価値旅行者を日本各地へ誘客し、地域の活性化や雇用・所得の増加に資することができるよう、引き続き取り組んでまいりたい。

旅行会社招聘事業

 
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