【日本政府観光局インバウンド最新リポート 89】映画祭で日本文化を発信 JNTOローマ事務所 北村 徹 所長


ティベレ川中洲で開催された映画祭「イゾラデルチネマ」

「真夏の夜の夢」

 今年の夏の欧州は熱波に襲われた。イタリアも暑さと干ばつが続き、特に北部は深刻で今年はワインもトリュフも駄目だなという声が聞こえてくる。ローマも毎日35度を超え、名物の噴水も心なしか勢いが衰えているようである。

 そんなローマは春より世界中から観光客が戻り、街のにぎわいを取り戻している。特にアメリカからの観光客が多いようだ。イタリアとアメリカを結ぶ航空路線がいち早く再開されたのも一因であろう。夏からはアジア人の観光客も少し見かけられたがまだ少ない。

 1年中、観光客が途切れないローマであるが、放っておいても外国人観光客が来る真夏に数々のイベントがある。カラカラ浴場の古代遺跡を舞台としたオペラ、フォロロマーノでのプロジェクションマッピング、ティベレ川中洲での映画祭「イゾラデルチネマ」などなど。

 映画祭「イゾラデルチネマ」では、在イタリア日本国大使館、ローマ日本文化会館、JNTOの連携により3年ぶりにジャパンナイトを開催し、満席の屋外映画場で多くのイタリア人が日本を楽しんだ。イタリアで最も人気がある旅行誌の一つ「ロンリープラネット社」が選ぶ「BEST IN TRAVEL 2022」に選ばれた四国をテーマに取り上げ、観光パンフレットの配布をはじめ、四国を舞台にしたアニメ映画「竜とそばかすの姫」(イタリア語字幕)の放映や日本から招待した阿波踊りチームの公演、書道・着付けのワークショップを行った。「今まで知らなかった地域や阿波踊りの文化に触れることができ、日本に行きたくなった」などの声をいただき、イタリアでの日本人気が引き続き高いことを実感させた。

 フォロロマーノでのプロジェクションマッピングでは、全員にイヤフォンのセットが配られ、日本語のチャンネルもあった。古代ローマの遺跡にかつての風景が写しだされていく映像は、ローマの古代ファンでなくても幻想的なシーンを楽しめるだろう。

 夏時間で夜はなかなか暗くならないので、どのイベントも開始時間が21時と遅いのが日本人にとっては奇異だが、暑い昼間に屋外イベントをするのはローマでは厳しい。日本では終了時間が23時を過ぎるイベントはまれだが、市内のホテルに宿泊している観光客にはあまり問題がない。観光客向けと割り切って、遅い時間にイベントを行うのも誘客方法の選択肢かもしれない。実施する関係者の方々は大変だが、イタリア人は現にそれを実行している。

 世界有数の観光都市であるローマであるが、それにあぐらをかくことなくさまざまな工夫をして外国人観光客を楽しませている。

 話は変わるが、訪日観光をするイタリア人から聞く要望の一つとして、朝食にエスプレッソを提供してほしいとの声が多く挙がる。イタリア人の朝食はエスプレッソか、カプチーノに大きめの甘いパンを1個というのが通例である。ホテルや旅館の関係者の皆さまには、ぜひともエスプレッソのご準備をお願いしたい。

ティベレ川中洲で開催された映画祭「イゾラデルチネマ」

 
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