【日本政府観光局インバウンド最新リポート 83】英国旅行業の動向と訪日再開 JNTOロンドン事務所 地主 純 所長


急回復予想も変化に対応を

 英国の新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和と旅行市場の正常化は、1年前の今頃に始まった。英国政府は2021年2月22日にロックダウンを段階的に解除するロードマップを発表した。

 英国では20年12月上旬にはワクチン接種が始まり、21年3月末には全人口の50%弱が1回目の接種を終え、ロードマップ発表翌日から6月中旬まで1日当たりの感染者数は1万人未満の水準にとどまった。

 このような中、ロックダウンの段階的な解除は順調に進み、5月17日には宿泊施設の営業が再開して国内旅行が可能になり、8月には宿泊業の売上高がコロナ以前を上回る水準まで回復した。

 渡航先の入国規制にも影響される海外旅行はすぐにとはいかないが、ワクチン接種完了者の隔離免除など入国規制が大幅に緩和された7月以降、堅調に回復している。

 オミクロン株の感染拡大を受けて英国も11月末から各種規制を強化するが、力点はブースター接種の加速に置かれた。入国規制は検査の多少の強化と数日の隔離が復活した程度。国内の行動規制もマスクの着用義務と在宅勤務の要請ぐらいで店舗の営業は継続できた。これらの規制も1月末までには全て解除されている。入国規制は、2月11日以降、ワクチン未接種でも隔離不要というところまできた。

 詳細は統計の発表を待つ必要があるが、旅行需要も規制の解除で再び回復する気配がある。1月14日にフランスへの入国が再開すると、スキー客の駆け込み需要が発生した。例年、1月ごろに増える長期休暇の予約の動きが多少遅れる程度で済むかもしれない。

 いつか日本はこういう経過をたどった市場と向き合うことになる。ひとたび入国規制が解除されれば、訪日旅行の急速な回復は間違いない。自然の中での体験への需要の高まりや、柔軟なキャンセルポリシーを求める傾向があることも間違いないだろう。訪日旅行への関心は依然高く、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックを経てますます強くなっているようにも感じる。

 一方で、旅行会社の体力がいつまでもつかという懸念もある。雇用調整助成金に似た支援措置(furlough scheme)は21年9月末で終了した。コロナを理由に発生したキャンセルに対して旅行会社が発行するバウチャーを保証する制度(ATOL scheme)も22年9月には終了する。この保証で返金を免れたものが一部あるはずで、今春の訪日が難しければ、返金を避けたい旅行会社は日本以外の目的地を代替案として提案するかもしれないし、そうでなければ旅行会社は返金を求められるかもしれない。旅行会社の勢力図が大きく変わる、または、訪日旅行を取り扱う旅行会社が弱体化することになれば、長期的な影響は避けられない。

 このようなダウンサイドも含めてあらゆる可能性を念頭に、いまのうちからしっかりと準備を進める必要がある。インバウンドが再開したときに市場の変化を見てただびっくりする、ということはないようにしておきたい。

 
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