旅行販売自粛も再始動準備
3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言した新型コロナウイルス感染症は当地タイでも、4月初旬現在、感染拡大が続いており、タイ国民の日常生活はもちろん、訪日旅行を含むタイの旅行市場に甚大なマイナスの影響を与えつつある。以下、本稿執筆時点4月初旬におけるタイの状況を報告する。
まず、首都バンコクの状況から。3月26日にタイ政府は新型コロナウイルスへの感染拡大防止のためにタイ全土に非常事態宣言を発令、国境を封鎖し、原則として外国人の入国を禁止した。これと前後して、バンコク都庁は人が集まる施設の一時的閉鎖を段階的に進め、現在、バンコク都内のショッピングモール、レストラン、会議場などは臨時休業か部分営業となっている。
これらの状況に加えて在宅勤務を採用する企業の増加もあり、バンコク都内は昼夜を問わず、人種を問わず、人出は大幅に減少している(夜間外出禁止令により夜10時から4時まではタイ全土で外出禁止)。多くのオフィスビルでは1階入り口で、検温やマスク着用のチェックを行っており、場合によっては入館を拒否される場合もある。筆者個人の見た範囲では街中でのマスク着用率は100%に近い。
タイ政府はソーシャルディスタンスを提唱しており、公共交通機関の座席はもちろん、銀行の待合席などでも間を空けての着席が求められている。非常事態宣言は現在4月30日までとされているが、内閣の承認があればそれ以降も延長が可能である。多くの人が「巣ごもり」状態となったバンコクは静かな緊張感に包まれている。
次にタイの訪日旅行の状況である。3月3日にタイ観光・スポーツ省は旅行会社に対して、感染リスクのある国・地域へのツアー商品の造成・販売自粛を要請、続いて27日には全てのツアー商品の造成・販売自粛を要請した。日本政府も4月3日からタイを入国拒否対象地域に指定したことから、訪日旅行は事実上できない状況となっている。日本行きのフライトも、4月は大部分の便が運休と発表されており、タイ人訪日旅行市場の回復の兆しはまだ見えない。
一部の旅行会社はタイ国内の感染者が少数にとどまっていた2月ごろまではタイ国内ツアーの販売に活路を求めたが、それも不可能となったため、現在はウイルス感染予防のための消毒サービスやマスク、デジタル体温計などの販売を行っている。
現在、当所でも、非常事態宣言の翌日3月27日からタイ人職員は毎日ほぼ全員在宅勤務という態勢となっている。不便な勤務状況ではあるが、新型コロナウイルス終息後、一気呵成(かせい)に訪日プロモーションを再始動すべく、職員一丸となって、その時に向けた情報収集や計画立案など、目下プロモーションの「仕込み」を行っているところだ。一日も早い事態の収束を願うばかりである。