地方の魅力で商品に特別感を
2018年の訪日外客数が過去最高の3119万人に達する中、ベトナムについても月々の外客数は過去最高を記録し続け、18年は38万9千人を記録した。対前年伸び率においては、JNTOが訪日外客数を発表している43の国と地域の中で第1位となる25・9%増であった。
消費面においては、観光庁が発表した18年の消費動向調査によると、ベトナムは「食品」「電気製品」「化粧品」「医療品」などを中心に消費実績が高く、日本滞在中の合計支出額は、調査対象全20市場の中で、中国に次ぐ第2位であり、その消費額は30万円であった。
日本貿易振興機構が発表した18年のベトナムの1人当たりGDPは2553米国ドルであるのに対し、訪日観光の重点市場となるホーチミン市、ハノイ市では、15年の時点でそれぞれ5318米国ドル、3553米国ドルとなっており、今後も経済成長が続くと言われている。訪日外客数、消費額の両面において、ベトナムは非常に勢いのある訪日市場だ。
18年に当事務所で実施した調査によると、ベトナムにおける訪日旅行販売数の実績による内訳は、77%が団体旅行、13%が個人旅行(内訳ジャパンレールパス約57%、パッケージ商品約16%ほか)、残りの10%がインセンティブ旅行となった。
団体旅行商品に関しては過半数がゴールデンルートを回る行程だ。その他の商品を確認しても、東京や大阪を中心にした行程が全体の95%となっており、都市部の人気が圧倒的である。この傾向は団体旅行に限らず、個人旅行にも共通する。
これだけ都市部やゴールデンルートが人気な理由は、東京、京都、大阪、富士山といったコンテンツがベトナム人にとって絶対的な存在であるためだ。せっかく日本に行くのであれば、代表的なコンテンツは旅程から外せない。
そんな中、ゴールデンルートを回る商品については価格競争が始まっており、消費者からは他商品との差別化が求められている。実際、現地旅行会社からは、東京、京都、大阪、富士山といった代表的なコンテンツに加えて、地方を含めた日本の多様な魅力に関する情報を求める声が大きくなっている。
ちなみに、査証の取得が必須となっているベトナム市場においては、旅行商品購入時に査証を旅行会社の代理申請によって取得するケースが多く、訪日旅行全般に関して旅行会社による影響力が大きい市場といえる。
よって、ベトナムにおける訪日市場のさらなる拡大に向けた鍵の一つは、「市場に大きな影響力を持つ旅行会社に対してゴールデンルート以外の魅力を伝え、それをどう商品に含められるか」である。
彼らへのアプローチを実施する際は、ベトナム市場にまだ浸透していない日本の魅力を、既知の代表的なコンテンツと組み合わせて紹介し、提案が商品の特別感に貢献するものであることを印象付けるほか、例えば、ランドオペレーターなど事業者の紹介を併せて行うといった商品化に直結するプロモーションが効果的だ。