【日本ふるさと紀行 33】旧豊田村(長野県中野市)~高野辰之「故郷」のふるさと 旅行作家 中尾隆之

  • 2018年9月24日

山青く、水清い、詩情育む北信濃の里

 
 ♬兎追ひしかの山 小鮒釣りしかの川 夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷……日本人なら誰もが唄える大好きな唱歌に『故郷』がある。生まれ育った地を離れた人はもとより、多くの人の胸に染み入る歌である。

 作詩者の高野辰之の生まれ故郷は、長野県中北部。なだらかな山々に囲まれて田畑や棚田が広がる千曲川左岸の旧豊田村である。

 その『故郷』のふるさとを見たくて、小布施に住む友人の車で飯山線替佐駅の北西にある生家を訪ねた。石塀を巡らす屋敷や土蔵のある大きな農家で、辰之は家業を手伝いながら親の目を盗んで蔵に隠れて本を読む少年だったという。

 辰之が通い、のちに代用教員を務めた小学校は坂道の上。その跡地に高野辰之記念館が建っていた。

 前庭にはマント姿の本人の彫像、館内には自筆の書や書簡など資料を展示。オルガンも置かれてあった。

 明治9年(1876)生まれの辰之は向学心に燃えて、長野県尋常師範学校(現信州大学)を卒業後、上京して言語学者・上田萬年博士の下で国文学を学ぶ。国定音楽教科書を編纂する中で『春が来た』『紅葉』『朧月夜』などを作詩し、小・中・高校、大学100余校の校歌も書いた。だが本業は『日本歌謡史』『江戸文学史』『日本演劇史』で知られる高名な国文学博士である。

 2階の窓辺の張り紙が「かの山」とされる大持山や熊坂山、大平山、「かの川」といわれる斑川の方角を矢印で示す。歌の風景が緑の中に静かに広がっていた。

 周辺には高野家の菩提寺で辰之直筆の掛軸が残る天正寺や「朧月夜」に出てくる鐘のある真宝寺、欄干のパネルを叩くと「故郷」のメロディを奏でるふるさと橋、その下に小鮒を釣った斑川などが「ふるさと遊歩道」で結ばれていた。

 わが故郷はこの度の北海道胆振東部地震でたまたま激震地の安平町である。

 ♬山は青き故郷 水は清き故郷……この歌がことさら胸に迫る。

 (旅行作家)

 ●高野辰之記念館TEL0269(38)3070

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