
「『…頼みの経営』から抜け出す」ために掲げた七つの「原理原則」のうち、「市場開拓」「顧客確保」「品質向上」「情報集め」「人心の喚起」「高付加価値化」について考えてきた。今回から、最後となる7番目のテーマ「収益性の確保―損益分岐点を引き下げる」に入っていきたい。
弊社では毎年、「旅館の経営指針」というものを刊行している。旅館・ホテル業界を取り巻く経営環境を背景に、その年、その年のテーマとなる言葉を据えて、さまざまな角度から提言しているものである。実は、世がコロナ禍に突入した翌年の2021年に掲げたテーマが「高収益経営へ―Chance to Change!」というものであった。この時の提言論旨をごく手短に言うと、「コロナ真っ只中の今こそ、アフターコロナに向けての体質転換を進めるべきであり、今がそのチャンス」ということである。そしてその転換によって目指す方向を「高収益経営」とした。その中に述べたことはここでのテーマに合致するものであるし、また3年近くたった今も同じことが言えるので、しばらくこの内容をなぞってお伝えしていこうと思う。
前置きが長くなったが、本題に移る。
(1)売上至上主義を疑う
私たちは長い間、売上至上主義にとらわれてきた。そして今もとらわれているかもしれない。
「売上がすべてを癒やす」とは、かつてスーパーダイエーを創業、急成長を成し遂げ、「価格破壊」によって日本の流通に革命をもたらした中内功の言葉である。売上はあらゆる業績の元となるものであり、ほとんどの経営指標は、売上高を基準に測られる。そして事実、売上が高まればそれらすべての指標が良くなる。「売上がすべてを癒やす」とはそういう意味だ。ただし…。
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