
(3)意欲を生みだす方策
意欲を生みだすために、どんなことをしていったらよいか?―単にそれだけを目的とした「お飾り」のような方策では、本当の意欲にはつながらない。なるべく、実益=商売や経営の向上に結び付ける取り組みを兼ねることである。
(ⅰ)オペレーションの整理
この2年余りで、大半の旅館がサービスや運営のあり方を、多かれ少なかれ変えてきたことだろう。ポリシーや営業方針に関わる変更を伴ったケースもあろうかと思うが、それらが未整理のまま放置されてはいないだろうか。「変えてきた」こと自体はおそらく間違いではないが、変えたなら変えたなりに、それを新たなスタンダードとして位置付けておく必要がある。
平たくいえば、業務フローやマニュアルの書き換えだ。この作業を、社員の協働ワークとして進めてみよう。もともとそんなものはなかったという旅館が多数かもしれない…が、だとしても、これを機にオペレーションの「見える化」に取り組んでみてはいかがだろうか。
多少回り道になるかもしれないが、コロナ禍で「どこをどう変えたか」を洗い出して整理してみるとよい。方針変更の理由や背景を振り返り、それによっては見直すきっかけともなる。そしてさらに意味あるものとするには、これを「かつて↓現在↓これから」という流れの中に落とし込んで、「今後どうしていくか」を考えるのだ(図参照)。
(ⅱ)市場動向の見通しと営業戦略の立案
これはまさに変動著しい今、やるべき作業である。
「市場動向の見通し」とは、「当館にとっての」でよい。現在の客層や利用形態がこの先どうなるか? 「全国旅行支援」で、今後どういう地域から流入が見込めそうか? 「コロナ以前」の宿泊スタイルはいつ頃、どんな形で復活しそうか? 同地域のライバル旅館では、どんな企画を打ち出しているか?… そして「営業戦略の立案」とは、こうした見通しを前提に、どんな手を打っていくか組み立てる、ということだ。
「それが意欲とどんな関係があるのか?」と思われるかもしれない。だが、この一見いかめしいテーマを「ともに考える」こと―これがまたとない意欲喚起の材料になると思う。「見通し」についての情報収集も、あえて手分けして当たってみるのだ。「ウチにはパソコンを扱える社員がいない」などと言わないでほしい。パソコンが使えなくとも、スマホで毎日いろんな調べものをしている社員はたくさんいるはずだ。
(リョケン代表取締役社長)