今回は「パソコンのフォルダで情報の収集・整理をしていきましょう」という手法レベルの話である。「そんなことならとっくにやっている」という方にはおそらく必要ないかと思う。
まず前回の要点―情報集めは、「…頼みの経営」から抜け出すための重要なファクター。ただし漫然とでなく「目的を持った情報集め」をすること、必ず「使うことを前提に」集めること。そして情報集めは設備投資など特別な場面だけでなく、「平常時」にも絶えず行っていくべき。裏返せば、こうした情報集めをするべき「目的」を平常時においても持つことが大切―。
(3)目的↓テーマ
ただそうは言ったものの、実際には、平常時に「○○の実現」とか「○○の改善」といった目的が明確に意識されているケースは少ないかと思う。目的とは大なり小なり「方針」と一体であって、いろんなことの方針があらかじめ決まっているわけではないからだ。そこで情報集めにおいては、「目的」の言葉をもう少し緩く「テーマ」と置き換えて考えるとよい。
(4)すぐに使えない情報
また、「使うことを前提に」としたが、いつもタイミングよく使える情報が現れるとは限らない。見た瞬間にピンときて「これだ!」と思えるような情報との遭遇はまれである。一方で、すぐには使いようがないが、いずれ役に立ちそうな情報というのがあり、これが結構多い。人は普通、これを「頭の中」に入れておく。たいがいのことはそれで支障なかろう。だがそれを経営に生かそうとする場合、決定的な問題が二つある。一つは、ほとんどのことは時間とともに「忘れてしまう」ということ。使うべき時には記憶にない。もう一つは、「断片的なまま」であるということだ。つまり記憶に残っていたとしても、どこに当てはめるか、何も整理されていない。
(5)フォルダで整理
今はパソコンという便利な道具がある。そしてこれには、「フォルダ」と「ツリー構造(階層構造)」という極めて秀逸なシステムが組み込まれていて、分類も階層づけも思いのままだ。これを生かさない手はない。
というわけで、パソコンのフォルダによる「テーマ別情報整理」をおすすめする。クラウドでも考え方は同じだ。まず現状の経営に即していくつかのテーマ分野を決め、そのテーマごとにフォルダを作ってみよう。この時、フォルダ名は単なる分野用語よりも、例えば、●集客対策、●リピーター化対策、●SNS活用、●サービス向上策、●料理メニュー開発…のように、どうしていきたいかという意図を含んだ言葉にしておくと、情報集めの焦点にブレがない。フォルダは、最初から体系的・網羅的である必要はない。後から加えたり統合したり、と状況に応じて変えていけばよいのだ。
(6)情報集めの観点
参考までに、テーマごとの中身となる情報を集めていく際の観点を挙げておく。(ⅰ)今の状況(自社・顧客・市場・ライバル)を把握する情報、(ⅱ)世の中の情勢やトレンドに関する情報、(ⅲ)考え方の手がかりやアイデアのヒントとなる情報、(ⅳ)何かの目的を実現するための手段やモノなどに関する情報―こうした軸を据えておけば、情報収集もそれなりに有意義なものとなるだろう。
(リョケン代表取締役社長)