【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 169】新型コロナウイルスへの経営対応56 原理原則3 品質向上10 佐野洋一


 (ⅱ)攻め=好印象をつくる(続き)

 「攻めのサービス品質」となる重点管理ポイントとして、前回は笑顔についてお伝えした。

 もう少し積極的な「攻め」としてどんなことがあるかと言えば、実は本連載〈157〉「接客に心を添える」および〈159〉「ダメ押しをする」で述べたことがそれに通ずるので、この時お伝えしたことを簡単におさらいしておきたい。

 カギの一つは「ヒューマン性」―人間が人間として放つストロークを大事にすること。具体的にはスタッフが、自館に対する自信や愛情を「私の思い」として伝えることである。スタッフの誇りの気持ちはお客さまの共感を呼びやすい。

 もう一つは「パーソナル性」―そのお客さまならではの情報を手掛かりに、「あなただけ」の言葉なり対応をしてあげることである。

 そしてこうしたことを組織的に行っていくためには、これらを「仕組み化」していくことである。どんな場面で、どんなことをネタに、どんな会話や気遣いをしたら効果的か…あらかじめ話し合って共有しておこう。

 これだけでも「好印象づくり」にはかなりの効果が期待できると思うが、ここでもう一つのポイントを加えておこう。キーワードは「先回りの親切」だ。

 何かに困って助けを求めてきているお客さまに対応するのは当たり前だが、これを先回りする。つまり「困っているのではないか?」という〈想像〉、「困るのではないか?」という〈予測〉を働かせる。

 ある旅館の朝食ブッフェで、食後にヨーグルトとコーヒーを取りに行った。ついでに水も欲しいと思い、それも持とうとしたが、すでに両手がふさがっており、どうしたものかと少しの間戸惑っていたところ、近くにいた係の人が「どうぞ」と言ってトレーを差し出してくれた…ほんの一瞬のささいなことだが、とてもありがたい気遣いであった。

 「〈想像〉と〈予測〉による先回り」が可能な場面には、例えば次のようなケースが考えられる。

 ●廊下で誘導表示を見ながらウロウロしている人↓「どこか行きたいところがあって探しているのか、あるいは館内で迷われたか?」 ●食事中に辺りを見回している人↓「何かしてほしいことがあって係を呼びたいのではないか?」 ●予報で雨や雪となる日に外へ出かけようとする人↓「傘がないと不自由するだろう、履物はどうか?」 ●つえをついたお客さまが向かおうとする先に段差がある↓「きっとこの先で難儀な思いをするだろう」 ●チェックインの際、荷物の多かったお客さま↓「チェックアウトの際も荷物が多くて大変だろう」 ●売店でたくさんのお土産を買ったお客さま↓「部屋まで運ぶのも大変だろう、持ち帰るのか、それとも送るのか?」。

 いずれも、どこの旅館でも日常的にごくありふれたケースだ。こんな場面の一つ一つが、やりようによっては「攻めのサービス品質」になる。
 ある人によれば、たいていのお店で、「一見客」―一度きりの来店で終わる客の割合は7割を超えるらしい。そしこれをあと10%、つまり6割に下げれば、客数は自然と増えていくという。「先回りの親切」で、この10%の再来率アップに挑んではいかがだろうか。

(リョケン代表取締役社長)       

 
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