【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 147】新型コロナウイルスへの経営対応34 ホームページのてこ入れ5 佐野洋一


 前回は、HPでブランディングを意識していくこと、またそのために伝えていくべきことについて述べた。自館の強みを、お客さまの共感を得ながらうまく伝えていくことが、ブランド力の向上につながる、と。

 ところで、さしあたりネタとなるような際立った強みを持たないところはどうしたらよいか…? 「取り組み」を提案したい。

 (9)ブランディングのための取り組み

 「取り組み」とは、今はまだないが、夢や理想を目指して努力する行為、またそのプロセスだ。これはブランディングのネタになるどころか、「共感を得る」という点において、すでにある強みのアピールより強い場合さえある。

 以下、「取り組み」の切り口として四つ挙げたい。

 (1)「こだわり」の価値づくり

 快適さ、おいしさ、やすらぎ、楽しさ、癒やし、健康、安全安心、スピード…といったテーマで、商品価値を高めたり、新たに生みだしたりするための取り組みを行う。ただし月並みなことでは訴える要素にならない。

 そこに、よそにはない「こだわりスピリッツ」を注ぎ込むこと、また取り組みの内容や成果が具体的であること、が肝心である。

 (2)人間づくり

 社員や組織のレベルを高める取り組みをブランディングのネタとする。ピンとこないかもしれないが、接客商売である旅館なればこその切り口だ。

 能力の開発や活用、意識づくり、連携プレイ、良い人間関係づくり、若い人の育成など、さまざまな人間形成の取り組みが、ヒューマン・ドキュメンタリーとしてアピールできる。しかし今のところ、これをやっている旅館はあまり見られないので、チャンスだと考えている。

 (3)コラボレーション

 自社と外との連携活動である。コラボ相手としては…地域、地場産業、飲食材料の仕入れ先などが考えられる。旅館は元来、単独の商品価値だけでは存立し得ない商売であり、多かれ少なかれ地域資源に支えられて成り立っている。

 だから周囲との連携を引き出す活動には、もっと意欲的であってしかるべきと思う。またそのような取り組みは、自社の資源だけで勝負するよりもずっと奥行きが増し、共感を呼ぶはずだ。

 (4)大義(社会正義)

 パタゴニアというアパレルメーカーは、衣類の「修理」による長期間使用の促進、製品リサイクルなどの理念と活動によって、多くのユーザーの圧倒的な支持を獲得している。

 また投資の世界ではすでに、CO2削減や、SDGsに沿った取り組みを行っている企業の株が買われ、そうでない企業が敬遠されるようになってきている。

 こうした動きは旅館にとっても無縁ではない。自然を守る、地球を守る、文化を守り育てる、人間性を取り戻す、社会的弱者に優しい…など、「大義」「社会正義」に沿った取り組みは、今後ますます支持獲得のカギとなっていくだろう。

 以上のような取り組みは、いずれも余計なエネルギーを要することだ。「HPのてこ入れ」という文脈の中でお伝えしたが、お分かりのように、小手先の「HPいじり」では実現しない。しかし、困難で価値ある取り組みであればあるほど、大きな見返りが期待できる。

(リョケン代表取締役社長)   

 
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