【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 217】採用対策⑧ 佐野洋一


 (13)自社HPの活用(続き)

 採用ページで訴求していくべきことの目標の一つ―「好きになってもらう」ことについて前回述べた。次に、もう一つの目標について考えたい。

 (ⅱ)就職先としての安心感を与える

 給与などの金銭的待遇、勤務形態や休日数などの勤務条件といったことが第一であることはもちろんだが、福利厚生もその重要な一部といえる。

 福利厚生―多くの旅館で供されているものに、単に「…があります」というだけでなく、もっと積極的なメリットとして訴求されてよいものがある。それは「従業員寮」「従業員食堂(またはまかない食)」「制服」である。制服以外は、それぞれ一定の費用負担を課しているケースが多いと思うが、それでも一般的な市中相場に比べれば格安で提供されている。言うなれば「衣・食・住」一式が会社で援助されているわけで、この経済的メリットはかなり大きい。独身なら、無駄遣いさえしなければ、10年も勤めれば相当な貯蓄ができる。

 さらに、寮が旅館に近接している、もしくは旅館と寮の間をマイクロバスで送迎しているところでは、通勤に伴うストレスもほぼない。旅館では昔からわりと当たり前のように図られてきた便宜であるが、世間一般では必ずしも当たり前ではない。求人サイトなどでは「社員寮・社員食堂あり、制服貸与」の1行で終わってしまうことだが、自社の採用ページなら、これらの利点を存分に伝えることもできよう。

 ただし、これら―例えば寮が見劣りするものだとすれば、そうもいかない。難しいところだが、人の確保のためには、こうした部分にしかるべきお金をつぎこんでいくことも、検討すべき課題と言える。

 社会インフラ―前回、「好きになってもらう」ための訴求ポイントとして「住環境の魅力」ということを挙げた。それとは別に、生活機能となる社会インフラが整っている地域なら、「安心感を与える」という意味で、それを伝えていくのも有効である。交通(駅、バス停など)、食品スーパー、コンビニ、医療(クリニック、総合病院、薬局)、子育て環境(小・中学校、幼稚園・保育園、託児所)、高齢者介護施設といったものだ。

 (ⅲ)親しみやすい表現

 採用ページは、なるべく親しみやすい見せ方を意識したい。型にはまったような内容、表現では、まず読んでさえもらえない。

 写真だけでなく、イラスト(マンガ)をあちこちに入れてみてはどうか。また動画の埋め込みといったことは手軽にできるので、ぜひお考えいただきたい。さらには文字も、一般的なフォントから離れてもよいかと思う。昨今では、手書き風の書体も出回っているので、そういうものを使ってみてはどうか。それだけで、書いてあることが格段に「やさしく」見えるはずだ。

 (ⅳ)活用を!

 さて、このようにして魅力的な採用ページができたとして、肝心なのはこれを有効に生かすことである。自社サイトは採用活動でも「ベースキャンプ」と考えよう。あらゆる外部メディアからここに誘導することだ。またその逆もしかり。例えば「ミートアップ(本連載〈125〉参照)」参加への動機付けとするなど、さまざまな活用が考えられる。

 (リョケン代表取締役社長)    


(観光経済新聞25年3月17日号掲載コラム)

     

 
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