
「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」に大きな注目が集まっている。中小企業に対する「通常枠」で3分の2・最大6千万円の補助枠、1兆1485億円という、これまでとは2桁も違う巨額の予算規模、いずれも近年にない破格のスケールだ。
すでに第1回の公募が5月7日(システム障害により延長)に締め切られたが、弊社でも直接間接に10余りの案件に関わった。初回から相当数の応募があったと思われる。
この事業のねらいは次の一言に集約される―「中小企業等の思い切った事業再構築への挑戦を支援」。つまり、単に業績を伸ばしたいとか、設備を良くしたいといったことでなく、「新しい商品開発や、新しい事業領域の開拓、新しい事業構造づくりに踏み出してください」といったメッセージが込められている。
「事業再構築」の定義として…「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の五つの類型が示されている。ただそれぞれの中身を詳しく見ると、旅館業を営む一般的な事業者の場合、あてはまるのはほとんどが「新分野展開」ぐらいではないかと思われる。
基本的に次の三つの要件―(1)製品等の新規性要件、(2)市場の新規性要件、(3)売上高10%要件―の全てを満たすことが求められる。
「製品等の新規性」とは、「製品等」(旅館においては「商品や提供サービス」と読み替えてよい)が、過去に自社で行っていたものとは別の新しいものであり、そのための主要設備を変更するものであること。また測定可能であれば性能などの違いを定量的に示せるものであること。
「市場の新規性」とは、既存の製品等と新しい製品等との代替性が低いもの、言い換えれば、既存の商売との「共食い」をきたすようなものでないこと、と捉えてよい。
そして「売上高10%要件」とは、その新たな事業分野の売上が、全体売上の10%以上(「グローバルV字回復枠」では15%以上)となるような計画を意味する。
ちなみに、このほか「直近売上の減少要件」「付加価値額の増加要件」もあるが、基準となる業績がコロナ禍でかなり落ち込んでいる中にあっては、比較的当てはまりやすいと捉えられる。
計画には、これ以外にも盛り込むべきことがいろいろとある。「現在の事業の状況」「強み・弱み、機会・脅威」「事業環境」「事業再構築の必要性」「事業再構築の具体的内容」…といったことだ。また「審査項目」として、「補助対象事業としての適格性」―前述の要件を満たすか、「事業化点」―事業化の体制や事業化の現実性が考慮・検証されているか、「再構築点」―事業再構築の名に値する事業といえるか、「政策点」―国や地域の政策方針に沿ったものであるか、といったガイドラインも示されている。これらのことがしっかり考えられているかどうかが重要なポイントであり、生半可なプランはここで振り落とされるだろう。
第2回公募の締め切りは7月上旬とされ、令和4年度にかけて、今回を含め合計5回の公募が予定されている。
挑むなら、政策の意図をしっかり踏まえ、「事業再構築」の名に値するような事業の立て直し、革新的拡大構想に、正面から取り組まれることをおすすめしたい。
(リョケン代表取締役社長)