
このたびは多くの旅館で、感染症特別貸付をはじめとする制度融資や信用保証の特例、持続化給付金や雇用調整助成金といった収入補填(ほてん)の制度を利用されていることと思う。しかし国や地方自治体で打ち出されている支援制度は、これ以外にもたくさんある。ただ「お金をもらえるだけ」という制度はまずないが、この時期に経営向上の取り組みを考えるのであれば、ぜひこうした制度の積極的な活用も考えたい。今回はこのうち、設備投資に関わる補助金の代表的なものをいくつかご紹介しよう。
(1)ものづくり・商業・サービス補助金
中小企業が「経営革新」するための設備投資等が対象だ。補助率は2分の1。「一般型」で最高1千万円までの補助が受けられる。「経営革新」の中身としては、「新商品(試作品)の開発」「新たな生産方式の導入」「新サービスの開発」「新たな提供方式の導入」の4類型があり、これらのいずれかに当てはまることが要件だ。
2012年度補正予算から続いている補助金制度で、毎年数回の応募期間が設定されている。直近の「令和2年度第3次(8月)」締め切り分における「一般型」の採択数は2637件で、採択率は38%だから、ハードルはそれほど高くない。
なお今は考えにくいが、「一般型」の他に「グローバル展開型」というものがあり、こちらは最高3千万円の補助金受給が可能である。その適用類型の一つに「インバウンド市場開拓型」といったものもあり、訪日外国人観光客市場の開拓を目的とする設備投資などが対象となる。
(2)IT導入補助金
サービス業を中心とした中小企業などが、生産性向上に貢献するITツールやソフトウェアを新たに導入する際に受けられる補助金である。補助率は2分の1で、30万円から450万円までの枠がある。ルーチンワークの効率化、社内の情報共有、経理業務の効率化、顧客管理や顧客へのアプローチツールなど、対象となるITツールの目的範囲は幅広い。登録された「IT導入支援事業者」と、導入する「ITツール」をあらかじめ決めた上で申請することになる。
(3)省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
「区分Ⅰ=工場・事業場単位」と「区分Ⅱ=設備単位」の二つに分かれる。「区分Ⅰ」はどちらかと言えば大規模な省エネ投資に関わるもので、補助額の上限は単年度で15億円から30億円と大きいが、その分ハードルも高い。申請手続きが比較的やりやすいのは「区分Ⅱ」で、対象となる九つの設備区分(照明、空調、ボイラ、冷凍冷蔵設備など)について、既存設備を省エネ性の高い設備へ更新する事業に対して、設備費の3分の1、下限30万円から上限3千万円までの補助を受けることができる。ただし導入する設備は、「一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)」が認めた省エネ性能を有するものに限られる。
補助金とは、「国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、(中略)事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するもの」(中小企業庁「ミラサポ」HPより筆者要約)だそうである。申請手続きなどはいずれもそれなりに煩雑だが、国の大事なお金を使うのだから、多少の面倒は乗り越えるべきだろう。
(リョケン代表取締役社長)