
ようやく戻りかけていた旅行マインドだったが、11月から感染拡大の「第3波」が進んで様相は一変。またしても「ブレーキ」がかかり、Go Toトラベルも一部地域が対象外となるなど、一気に暗雲が垂れ込める状況となった。
こうした中で、雇用調整助成金は、本年12月末までとされていた特例措置が来年2月末まで現行水準のまま延長される方針が、厚労省で決定された。雇用と経営の維持のためには、せめてもの救いである。
さて、本連載は今年3月以来、このコロナ禍にあってどのような経営対応をとっていくべきか、といったことについてお伝えしてきた。感染による経営リスクの続く間は、今後もそこに軸足を置いていく考えだが、今回は少し異なる観点のお話をしたい。それは、このコロナ禍にあっても、「短期と中長期」―この両方の視点を持って経営を考えていくべき、ということである。
(1)短期はあくまでもオペレーション
コロナ収束までの間は「とにかく生き延びるため、あらゆる手を尽くす」ことが求められる。月単位、あるいは週単位で細かい切り盛りをしていかなくてはならない。
資金繰りの算段、刻々と変わる状況に合わせた集客対策、あるいは従業員の出勤コントロールなどもあろう。いずれも重要なかじ取りだ。
だがあえて言えば、こうしたことは「オペレーションレベル」のことである。トップとしては、これらの課題について財務、営業、内部運営など、各分野の責任者に大局的な指示を出し、細かい対応は任せた上で、経過・結果の報告を受けて次の判断を下す、といった立ち位置に自らを置くことが望ましい。むろんそのためには、トップが常に自社の現在の「体調」と、世の中の最新の動きを正確に把握していることが前提である。
そうは言っても、こうしたことをこれまで全てトップがやってきて、いきなりそんな体制をとることが難しい旅館も多いかと思う。そのようなところでも、せめて一つか二つは、誰かに肩代わりしてもらうことをぜひお考えいただきたい。
何が言いたいか…足元のオペレーション的な対応にトップがあまりにも没入し過ぎて、大局観を失うことのないようにしていただきたい、言い換えれば、今こそ大局的な経営の全体像をじっくり考えていただきたい、ということである。
(2)中長期は経営の骨組みを見つめ直すこと
仮に右記のような状況を整えることができたとしよう。そのうえでトップが考えるべきことは、中長期に向けての立て直し策である。
もともと強い収益基盤が備わっていたところは別だが、そうでないとすれば、以前と同じやり方では、傷ついた財務状態を元に戻すだけでも容易なことではない。
立ち直りには非常に大きなエネルギーが要る。しかも多くの旅館が、コロナ収束とともに(もしかするとそれより早く)、借入金の返済に迫られることになるのではなかろうか。
だから今取り組んでいくべきことは、「経営の骨組み」のあり方をもう一度見直すこと、そして前回も述べたように、そこへの構造転換策を「ウィズコロナ」の今から講じていくことだ。「コロナが終わってから」では遅いのである。
(株式会社リョケン代表取締役社長)